a 長文 1.2週 te
 カブトムシやクワガタの生活する雑木林ぞうきばやしでは、ミヤマカミキリ、ノコギリカミキリなどの大型おおがた(しゅから、サビカミキリの仲間なかまの小さな(しゅまで、さまざまなカミキリムシが生活しています。細い枯れ枝か えだの一部に小さなあながあいていたり、木のかじりくずがもりあがってでていれば、たいていは、カミキリムシがいるか、でたあとと見てよいでしょう。
 このような枯れ木か きは、樹皮じゅひがあっても中は完全かんぜんに食いあらされ、かんたんに折れお てしまいます。カミキリムシの幼虫ようちゅうは、の皮の部分だけのこして、中を食べてトンネルじょうにしてしまいます。その一部に白いイモムシが入っているので、ちょうど、鉄砲てっぽうの中にたまをこめたように見えるので、鉄砲虫てっぽうむしともよばれます。
 このような食べ方をしますから、ヒトがだいじに育てている樹木じゅもくについたとなると、やはり害虫がいちゅうにされてしまいます。たとえば、シロスジカミキリの幼虫ようちゅうはイチジクのをよく食べます。子どもがイチジクの実をとりにに登ると、えだの中が、がらんどうで折れお てしまうことがあり、やはり嫌わきら れる資格しかくは、じゅうぶんにあります。
 キボシカミキリ、クワカミキリ、トラフカミキリなどは、クワにつくので養蚕ようさん家は嫌いきら ます。クロカミキリ、マツノマダラカミキリはマツにつきますから、一時、マツの立ち枯れた が 原因げんいんとして大さわぎされました。このような状態じょうたいは、森林の害虫がいちゅうとよばれてもしかたのない面もありますが、そうではない見方もできます。
 前に枯れ木か きに多いといいました。枯れか た木が、そのまま林の中にごろごろしていると、後から新しい木の芽き めがでるのをじゃますることになります。枯れ木か きはなるべく早く分解ぶんかいして、新しい木を生やしたほうが、森林にとってはぐあいのよいことです。枯れ木か きを食べる昆虫こんちゅうは、この枯れ木か き倒木とうぼく分解ぶんかいを早める働きはたら をします。ようするに森林の中のそうじ屋になるのです。
 この点では、けっしてわるい虫ではありません。林の樹木じゅもく
 333231302928272625242322212019181716151413121110090807060504030201 

若返りわかがえ 、つまり森林のわかさを保つたも 働きはたら をしています。同時に、この幼虫ようちゅうたち、あるいは成虫せいちゅうも、トリや小さなケモノの食べ物にもなりますから、森林の自然しぜんの一部としてのぞくことはできません。
 マツの害虫がいちゅうと考えられているマツノマダラカミキリについても、おもしろいことがわかっています。たしかに、このカミキリムシの幼虫ようちゅうはマツのざい部を食べあらします。この点は害虫がいちゅうとよばれてもしかたのないことです。ところが、生きている樹木じゅもくについた幼虫ようちゅうは、中心のざい部を食べても、樹皮じゅひざい部のあいだにある、水や養分ようぶんの通るかんのあるところは、あまり食べないものです。
 というのは、ここを早く食べてしまうと、が弱るのも早くなって、自分の食べ物をだめにしてしまう危険きけんせいがあるからです。ようするに、なるべく自体は長生きさせながら、あまり植物の成長せいちょう関係かんけいしない場所を食べているのです。ですから、マツの中でカミキリが少しばかり食べても、それほど急に、がだめになることはありません。

 (「いい虫わるい虫」奥井一満 日本少年文庫より)
 666564636261605958575655545352515049484746454443424140393837363534