1いまから三十七年あまり前、ちょうど、第二次世界大戦が終わって、アメリカと日本のあいだで、物資やヒトの移動がさかんになりました。この時、アメリカから、小さな白いガが日本に侵入してきました。2おそらく、サナギが荷物の一部にくっついて日本に渡り、こちらで羽化したのでしょう。
このガは日本の環境にうまくあったのか、たちまちふえはじめました。これがアメリカシロヒトリです。そして幼虫は、街の中の樹の葉を丸坊主にしていきました。3その後、日本の各地で、この昆虫の大発生が見られるようになりましたが、やがてまた、あまり見られなくなりました。いまでは、時々、かぎられた地域で発生するのが、見られるていどになりました。
4このガの幼虫は、ふ化すると最初は網を張り何百匹もの小さなケムシが集団で網の中で生活しながら葉を丸坊主にしていきます。サクラ、クワ、イチョウ、プラタナス、クヌギなど、なんでも食べ、このままふえると、日本中の樹の葉を食べつくしてしまうのではないかと思えるほどの勢いでした。
5ところが、このケムシは、成長すると網の中から出て、単独で歩きまわり葉を食べるようになります。そしてじゅうぶん成長した幼虫が、樹の皮の下や、割れ目の中などに入ってサナギになります。6そしてつぎの成虫が羽化しますが、この成虫は、あれほどたくさんいた幼虫ほどの数がいません。そしてつぎの幼虫は、そんなに多くはならないのです。
バッタの大発生のようなことにはけっしてなりません。7また、このガは都会の中にはよく見られても、森林の害虫になって、山の樹々を食べつくしたことは一度もありません。
じつは、このガの幼虫が、網から出て散らばって活動をはじめると、スズメやそのほかのトリにほとんど食べられてしまうのです。8トリのほか、クモやカマキリ、アシナガバチなどにも食べられてしまいます。じっさいには、〇・五パーセントていどの生存率
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