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 ぼくは、学校では体も大きいほうだし、声も大きいからちょっといばっています。ドラえもんに出てくるジャイアンみたいだと悪口を言う子もいるくらいです。今はもう、四年生だから、最近さいきんはあまりしないけれど、てい学年のころはしょっちゅうケンカをして、友達ともだち泣かせな  ていました。それに大きい兄さんがニ人もいるので、みんなよりいろいろな遊びや情報じょうほうも知っていて、そういう点でもクラスの中ではちょっとリーダーてき存在そんざいかもしれません。 
 しかし、うちでは「末っ子すえ こ甘えん坊あま  ぼう」と言われています。兄さんニ人は年が近いのですが、ぼくは下の兄さんより八さいも下なのです。だから、もう十さい過ぎす たのにときどき赤ちゃん扱いあつか されます。特にとく 、お母さんは、 
「ひろちゃんはまだ小さいから。」 
と、口ぐせのように言います。もうとっくにはお母さんを追い越しお こ ているのにです。 
 先月の終わりごろ、真ん中の兄さんが、 
「ひろさあ、母さん病院だし、今年は節分せつぶんやらなくてもいいよな。」 
と、ぼそっと言いました。お母さんは、年末ねんまつに具合が悪くなって、緊急きんきゅう手術しゅじゅつをし、今も入院しています。お医者さんから、病気の名前やどんな病気かを聞いたけれど、むずかしくてよくわかりませんでした。それより、病気になった理由が「働きはたら すぎ」だったのではないかと気になっています。もともとあまり体がじょうぶではなかったのに、三人も男の子を生んで育てているので、とても大変たいへんだったのだと思います。いつも、お母さん、もっと休めばいいのになあと思っていたのに、あまり休めないから、無理むりがいったのだと思います。 
 ぼくは心の中で、節分せつぶんをやらないと幸せな一年が過ごせす  ないかもしれないと思い、少し心配になりましたが、 
「うん、そうだね。おれは学校でも豆まきあるからいいし。」 
と、強がって言いました。すると兄さんは、うなずいてバイクででかけてしまいました。
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 それなのに三日の夜になって、突然とつぜんバタバタと兄さんたちが帰ってきて、ぼくにマスに入った豆をもたせると、 
「さあ、ひろ、かかってこい。」 
と言うのです。マジックでざつ描いえが おにのおめんをつけています。ぼくは、大きな声で、 
おには、外、福は、うち。」 
と、兄さんおにに豆をぶつけました。おには外、お母さん帰ってきて。心の中でそう叫ぶさけ と、なみだがぽろりとこぼれそうになり、ぼくはあわてて目をこすりました。

(言葉の森長文ちょうぶん作成さくせい委員会 φ)
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