1化学繊維が発達し、最近では、手間のかかる養蚕をする人が少なくなりました。けれど、カイコを飼っているところを見たことがある人、あるいは自分で飼ったことがある人なら、だれでも知っていることですが、2平らな入れ物の中にクワの葉を入れ、そのままにしておいても逃げだしもせず、あちこち歩きまわりもせず、ただクワさえきらさなければ、かんたんに飼えます。
3ほかの昆虫を飼う時には、逃げないようにカゴやふたのある入れ物に入れ、えさや水やと、けっこう苦労するものです。カイコはその心配がありません。やがて完全に成熟すると、入れ物のすみや、枯れたクワの葉のあいだに糸をはり、繭をつくります。4養蚕家が、この時に入れ物の上に繭をつくる格子状のワクを置いてやると、ここにはい上がって、一匹が一つずつきれいに繭をつくります。卵からふ化した幼虫が、繭になるまでだいたい一か月で、そのあいだに四回、脱皮をして成長し、繭の中でサナギになります。
5養蚕業では、繭ができるとすぐに集め、大きさのそろったものを選んで糸をとる工場に送ります。サナギが成虫のカイコガになるのは一週間ほどですから、ガにならないうちに糸をとりはじめます。6これは、繭を煮ながら糸をやわらかくして、ほぐれた糸をまき取る方法が一般的です。これで、一つの繭から切れずにつながった糸がとれます。現在の大きな良い繭は、千五百メートルほどの糸になります。この糸をより合わせ、絹糸にして布に織ります。
7このように繭から一本のつながった糸をとるのですから、繭の中で羽化したガが、繭を破って外にでたのではなんにもなりません。ヒトが糸をとるためには、成虫になってはいけないので、どんなにたくさんカイコが飼われても、すべて殺されてしまうことになります。
8つぎの卵を産ませる分は、別に何匹かのこしておけば、この
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