1「つぎは、あかばね(赤羽)!」
ヤッちゃんたちのうちは、あかばねにありましたから、竹ざお電車は、そこでストップです。あかばねのえきまえは、ヤッちゃんもよくしっています。
ところが、あれっ? ……ぜんぜん見たことのないところにきていました。
2竹ざお電車はおばあちゃんのうちへむかって、ものすごいスピードで走りました。右へいったり、左へいったり、ぐるぐる走りまわりましたが、どうしても、おばあちゃんのうちへかえれません。ふたりとも、あせびっしょりでした。3二十分も三十分も走りました。のどが、カラカラで、足もだるく、竹ざお電車は走ることができません。のろりのろりあるいていきました。
「にいちゃん、はやく、おばあちゃんのうちへかえろうよ。」
4しゃしょうさんのチイちゃんは、なんにも気がついていないようですが、うんてん手のヤッちゃんは、さっき、あかばねについたときから、これはたいへんなことになった、電車はまいごになったらしいとわかっていました。5ですから、かなしくて、おそろしくて、くちびるをへの字にまげて、もうすこしでなきそうになるのをじっとがまんしていたのです。
「どうしたの?」
竹ざお電車が、ぼんやりつったっていると、道ばたであそんでいた女の子が、よってきました。6ヤッちゃんよりも小さい子でした。
「あんたたち、まいごなのね。」
そういわれたとたん、ヤッちゃんは、パッとかけだしました。もうすこしでなきそうだったので、そんな小さい女の子とはなしをしたくなかったのです。7走りながら、オックン、オックン、なきじゃくりました。
(もう、おばあちゃんのうちへはかえれないかもしれない。おかあさんにもあえなくなってしまうかもしれない。)
そうおもうと、なみだがあふれてきて、ワァーンとなきだしてしまいました。
8「おにいちゃん、なかないでよう。」
しゃしょうさんは、ないていません。
「おにいちゃん、さがせば、きっと見つかるよ、おばあちゃんのうち。ね、だから、なかないでよう。」
小さいのに、なんて、しっかりしたしゃしょうさんでしょう。
9ヤッちゃんがないているので、おまわりさんは、チイちゃんに、いろいろはなしをきいていましたが、さっぱりけんとうがつかないようすでした。
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