1しゅうぎょうしきがおわりました。
きょうしつへはいってから、つうちぼをもらうのです。
ほそ長い、四かくなつうちぼを、りょう手を頭より高くさしあげて、うけとったとき、ぼくのしんぞうは、どきどきっどきどきっ、となりました。
2そのどきどきは、ぼくがせきについて、人に見られないように、はおりでかくしながらつうちぼをひらいて見るまでつづきました。
つうちぼのせいせきのところに、むずかしい字が六つと、やさしい字が三つ、ついていました。3やさしい字は乙でした。どうしたわけか、乙の字は、いつのまにか、おぼえていたのです。けれども、むずかしい六つの字はわかりません。
「なあんだ、むずかしい字ばっかしで、わからんなあ。」
ほくは、ひとりごとをいいました。4すると、となりのなおみちゃんが、
「のんちゃん! むずかしい字があるの。そいじゃあ、きっと優だもの。」
と、小さい声で、こっそりおしえてくれたのです。
(そうか、優なのかあ、よかったあ。)
ぼくは、もううれしくて、むちゅうでした。
5だから、「ふところに、ちゃんとしまうんよ」と、でがけにいわれたかあさんのいいつけなど、すっかりわすれてしまいました。校門をでると、つうちぼを、わざと左手で、人に見えるように高くもちあげてあるきました。
6いちばんはじめに、となりのおじさんにあいました。おじさんは、ぼくがおもったとおり、
「戸中谷(とちゅうや)のぼうか。どら、おじさんに見せてくれるか。」
といいました。ぼくは、
「はい。」
と、にこにこしながら、むねをはって、このすばらしいつうちぼをおじさんにさしだしたのです。7すると、おじさんは、
「ほう。」
と、かんしんしてから、
「ぼうは、よくできるなあ。」
と、頭をなぜながらほめてくれました。ぼくは、もう、ますますうれしくて、おどりあるきたいくらいでした。
8それからは、どうろであう人には、こちらから、
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