1いまから二千二百年ほどむかしの話です。中国に、秦という国があって、始皇帝という王様が、大きな勢力をふるっていました。2その宮殿は、中国の歴史の中でこれほど大きなものはなかったと言われているほど、りっぱなものでした。3なにひとつ不足のなかったこの皇帝でも年をとるということだけはどうすることもできません。4「なんとかして年をとらない方法はないだろうか」と考えた皇帝はおしまいに家来に言いつけて、仙人のところへ行って、不老長生の薬、つまり年をとらないで、永久に死なない薬を手に入れさせることにしました。5学者のことばによれば、東のほうの海に蓬莱山という島がある。その山の中には仙人が住んでいて、そのふしぎな薬を作っているのだということでした。6そこでたくさんの船が用意されて、どこかわからない蓬莱の島をさがしに東へ東へと向かったのですが、その島はとうとう見つからず、その仙人の薬も手にはいらなかったということです。その使いのひとりに徐福という家来がいました。7その徐福が日本に渡ってきて死んだという伝説が残っています。和歌山県の新宮市に、その徐福の墓と伝えられているお墓がありますが、ほんとうにその人の墓かどうかわかりません。
8これは中国の人々でさえ、まだ日本の島を知らなかった大むかしの話です。しかし中国では、太陽ののぼる東の海、その海の向こうに、ふしぎな力をもった仙人の住む島があると考えられていたようです。
9ところが大むかしの日本人は、反対に西の海の向こうに理想の国があるように考えていたのです。それは「常夜の国」と呼ばれていました。太陽が沈んでしまう西の海の向こうですから、そこはいつも暗い夜の国なのです。0それでも日本人にとっては、いつも西の海をこえて行った大陸が、あこがれの国だったようです。どうしてでしょうか。
こんなふうに考えてみることはできないでしょうか。太陽は東の
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