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 ここでもう一度クレバー・ハンスの誤りあやま を思い出してください。クレバー・ハンスが計算をするというのはまちがいでした。それならば、動物たちはみんな数えることはできないのでしょうか。ハトは四つぶのとうもろこしを一まとめにして積み重ねつ かさ た山と五つぶの山とを作って置くお と、これを区別くべつして好んこの で五つぶの山をつつき、さらに五つぶと六つぶとにすると五つぶよりも六つぶ好んこの でつつくという報告ほうこくがあります。この実験じっけんでは六つぶと七つぶとにしたところ、それは区別くべつできなかったということです。ハトはこのように数の大小をある程度  ていどはみわけられることがわかります。人間でも一度に目でみて数えられる数は七つ前後だということですから、ハトが六つと七つとの区別くべつがつかないのもうなずけることかもしれません。
 この場合には同時に数の多少が比べくら られるのですが、同時には比べくら られない場合はもっとむずかしくなります。ツバメはに七つか八つのたまご産んう で温めますが、たまごの一つをそっととりのぞいてみると、すぐにさらに一つを産んう 加えくわ ます。また一つをとり除く  のぞ とまた一つを産みう 、そういうことをくり返すと五十も産みう 続けつづ たという報告ほうこくもあります。しかし、これはツバメが数えながらたまご産んう でいるのかどうかは怪しいあや  ものだと思います。べつ実験じっけんでは鳥はの中の四つのたまごの中から二つのたまごをとり出すと気づきますが、一つだけではまったく気づかないという報告ほうこくもあります。
 オランダのレベッツ先生たちはニワトリに一列に並べなら たコメつぶをついばませる実験じっけんをしましたが、一つぶ置きお にコメつぶのりではりつけてとれないようにしました。トリはすぐにそれがわかってまちがいなく一つぶ置きお につつくことができました。この訓練くんれんのあとで、二つぶ置きお にとれるようにしましたが、これもできます。ニワトリがほんとうに数えていたのかどうかはこれだけではどちらともいえないかもしれません。いちいち、数えなくてもはがれるコメつぶとはがれないコメつぶとをなにかの手がかりで区別くべつしていたかもしれないからです。
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 しかし、ハトの実験じっけん結果けっかではハトは数えることができそうなのです。ハトの前に一度にいくつぶものこくつぶ並べるなら  のではなく一つぶずつ出します。そして六つぶまでは自由についばんで食べることができますが、七つぶめごとにはりつけられたつぶを出しそれは食べることができないようにしました。これをくり返しているとやがてハトは六つぶつついては七つぶめはつつかないで見送るようになるのです。しかし、この結果けっかでもハトがほんとうに数えていたのかはわからないのです。六つぶまで食べる時間がわかっていて、時間の経過けいか判断はんだんしていたかもしれないからです。そこで一つぶつぶを出す間の時間をいろいろ変えか てみましたが、それでも七つめはつつかないで次を待つのは変わりか  なかったのです。

(「動物とこころ」 小川たかしちょ 大日本図書より)
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