二番目の長文が課題の長文です。
1手に触れるものをすべて金にしてほしい。そう願った王様は、食べるものも、着るものも、すべて金にしてしまい、やがて最愛の娘までも金にしてしまう。ギリシャ神話に出てくるミダス王の話である。2豊かな社会を追い求めてきた人類の歴史も、このミダス王に何か似ていないだろうか。強い国を願って作られた核兵器は、相手を滅ぼすばかりか、地球をも滅ぼすようになった。豊かな資金運用を願って作られた金融工学は、その資金の何倍もの返せない借金を生み出した。3そしてまた、豊かな社会を作るための経済活動の発展は、環境破壊という人類にとっての新たな貧困を生み出している。私たちは、量を追い求めるあまり、制御することの大切さを忘れているのではないか。
4その原因は、第一に、世界の戦後の歴史が、不足からの自由という観念につき動かされてきたからだ。昔話に出てくる意地悪なおばあさんは、必ず大きい箱をもらう。しかし、大きい箱に入っているのはガラクタであり、本当の宝物は小さい箱に入っている。5これは、昔の人たちが、大事なのは大きさではないということを、よりよく生きるための知恵として身につけていた証拠ではないだろうか。不足から過剰へと一直線に進んできた私たちの生活も、今一度先人たちの知恵に立ちかえって見直す必要がある。
6第二の原因は、量の拡大を求める心理には、必ず競い合う他者がいるということである。国と国との関係で言えば、どの国のGDPが世界で第何位かということが、さも重要なことであるかのように論じられることが多い。大事なことは、GDPの額ではなく、その国に住む人が自分たちの生活をどのくらい幸福と感じているかどうかであるはずなのにである。7飽食のニワトリの群れに飢えたニワトリを入れると、その飢えたニワトリにつられてすべてのニワトリが再びえさを食べ出すという。基準を自分の中に持たず、他者との比較の中に見る私たちも、このニワトリたちと変わらないのではないだろうか。
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