1. 【1】十五のとき、
信玄は、おとうさんといっしょに、はじめて、
戦争にでかけました。
2. しかし、
敵が、しっかり
城をまもっているので、なかなか、
城をせめおとすことができません。そのうち、
雪がどんどん、ふってきました。
3. 【2】おとうさんは、あきらめて、じぶんの
国にひきかえすことにしました。
4. すると、
信玄は、おとうさんにないしょで
家来たちをあつめて、
5. 「この
雪で、
敵も、せめてこないとおもって、ゆだんしているだろう。【3】そのすきに、せめこめば、きっと、せめおとせるにちがいない。」
6. そういって、
敵の
城にむかい、ゆだんしている
敵の
城を、せめおとしてしまいました。
7. それからも、
信玄は、いく
度も
戦争をしましたが、一
度も、まけたことがありませんでした。
8. 【4】そして、とうとう、
謙信と
信玄は、
川中島というところでたたかうことになりました。
9. しかし、どちらも、つよい
者どうしです。なん
度たたかっても、なかなか、
勝負がつきません。
10. 【5】あるとき、
謙信は、ウマにのり、
刀をふりあげて、いきなり
信玄の
陣地に、せめこんでいきました。
11.
信玄は
刀をぬくひまもありません。もっていた
軍配で、やっと、
謙信の
刀をうけとめました。
12. 「えいっ、えいっ。」
13. 【6】
謙信は、なおも、はげしく、きりかかります。
謙信の
刀が、
信玄の
肩にあたって、
血がながれました。
14. そのとき、
信玄の
家来が、かけてきて、
謙信ののっているウマのおしりを、びしりと、
槍でたたきました。
15. 【7】「ヒヒーン」
16. ウマは、おどろいて、にげだしました。∵
17. こうして、
謙信は、とうとう、
信玄をうちとることができませんでした。
18. やがて、
信玄は、ほかの
国と
戦争をはじめました。
19. 【8】
信玄の
国は、
山国です。
塩や、さかなは、よその
国から、はこんでこなくてはなりません。そこで、あいての
国では、とちゅうの
道をふさいで、
塩やさかなを、
信玄の
国にはこべないように、してしまいました。
20. 【9】
謙信は、その
話をきいて、
信玄を、
気のどくにおもいました。そして、あいての
やり方に、すっかり、はらをたてました。
21. 「
生きていくのにひつような、
塩やさかなをたべさせないようにするなんて、なんという、ひきょうな
やり方だろう。
22. 【0】わしと
信玄とは、
敵どうしだが、だまってはいられない。よし、すぐに、こちらからおくってやろう。」
23. そういって、じぶんの
国から、
塩やさかなを、どっさり、
信玄のところへおくってやりました。
24. (
大石真)
25. 「
子どもに
聞かせるえらい
人の
話」(
実業之日本社)