【1】「香りマツタケ味シメジ」という言 葉にあるように、私たち日本人は、秋になる とマツタケを楽しみたいと感じます。マツタ ケご飯に、土瓶蒸し、焼(やき)マツタケ、 貴重で高級な味を年(ねん)に一度味わって 、心も体も元気になるようです。【2】ま た、ふだんからシイタケ、エノキダケ、シメ ジ、ヒラタケ、マイタケ、エリンギなど、お 料理に欠かせない素材となるきのこもありま す。このように身近な存在であるきのこは、 いったいいつごろから食べられるようになっ たのでしょう。 【3】高松の この峯も狭(せ)に 笠立 てて みち盛(さか)りたる 秋の香(か)のよ さ 万葉集に収められた歌です。「笠立てて」 はマツタケがカサを広げてはえている様子、 「秋の香(か)」はマツタケの香りのことで す。【4】この歌に見られるように、日本人 は少なくとも奈良時代にはきのこを食べてい たと考えられます。更に平安時代には、貴族 たちの間で、季節をいろどる文化的行事とし てマツタケ狩(が)りが行われたそうです。 【5】きのこは、光合成をしている植物と 違って、光がなくても生きていくことができ ます。昔は、花を咲かせない植物であるシダ やコケの仲間と考えられていたこともありま すが、今は菌類として植物や動物とは違う生 物だとされています。 【6】植物や動物は、食べたり食べられた りすることでつなが り、バランスが保たれ ています。植物は光から栄養物をつくり出す 生産者の役割を果たしています。動物は、ほ かの生物を食べて栄養を吸収する消費者の役 割を果たしています。【7】その植物の生産 と動物の消費がうまく流れていくように、消 費し切れなかったものを分解するのがきのこ たち菌類の役割です。 きのこは、「大きな木にはえる小さな子ど も」ではありません。【8】自然界の中では 、植物や動物とならぶような大きな存在なの で∵す。そう思うと、おなべの中でぐつぐつ |
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煮えているエノキやシメジが「自然を大切に するんだよ」と語りかけるように思えてきま す。 【9】同じように見えるきのこにも、いろ いろな性格がありま す。のんきなエノキ、 まじめなシメジ、じっとマツタケ、おいシイ タケ、筋肉もりもりマッシュルーム。【0】 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会 μ |