長文集  3月4週  ○石鹸の起源  0e-03-4
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/12/15 06:30:19
 【1】今から五千年くらい前
の古代ローマの時代、「サポー
の丘」というところにあった神
殿では、いけにえの羊を焼いて
神に捧げるという習わしがあり
ました。この羊の脂がしたたり
落ちて木の灰に混じり、土(つ
ち)に染み込んでいきました。
【2】この土(つち)が汚れを
よく落としたことから、石鹸と
して使われるようになったとい
われています。英語で石鹸のこ
とを「ソープ」といいますが、
これは、この丘の名前の「サポ
ー」から来ているそうです。 
 【3】また、同じころ、現在
のイラクのあたりで栄えていた
メソポタミア文明でも、石鹸の
作り方がわかっていたようです
。シュメール人が残した粘土の
板には、くさび形(がた)文字
で、木の灰にいろいろな油を混
ぜて煮ると石鹸ができると書い
てあります。 
 【4】このことからもわかる
ように、石鹸 は、動物や植物
の油を、灰汁などのアルカリ性
の液体で煮ると作ることができ
ます。灰汁というのは、植物の
灰を水に溶かしたその上澄みで
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す。【5】しかし、アルカリ性
の液だけでも汚れはいくらか落
とせることから、人々は洗濯に
は灰汁を使うことが多かったよ
うです。
 【6】日本に石鹸が入ってき
たのは、室町時代の終わりごろ
です。鉄砲などと同じように、
石鹸はポルトガル人が持ってき
たものです。しかし、高級品だ
った石鹸は、身分の高い人たち
だけのものでした。【7】一般
の人々は、洗濯には、ムクロジ
という木(き)の実やサイカチ
という木(き)の実のさや、そ
して灰汁を使っていました。 
 ちなみに、ムクロジの木(き
)の実の種はかたく、お正月の
はねつきの羽のおもりに使われ
ています。【8】この実の外側
の皮を水につけてもむと、泡が
出て石鹸のように使えたので 
す。 
 こんなに古い歴史を持つ石鹸
ですが、だれでも気軽に洗濯に
使うことができるようになった
のは、日本では明治時代の後半
になってからです。∵
 【9】手を洗うとき、私たち
も古代ローマのいけにえの羊に
、感謝しなくてはなりません 
ね。 

「ヒツジさん、石鹸のもとにな
った感想をひとこと。」
「まあ、セッケン(世間)では
そう言っているけどね……。」
「いけにえは、もうこりごりで
すか。」
「そうぷ。」【0】

 言葉の森長文(ちょうぶん)
作成委員会 τ