長文集  10月3週  ★第二次大戦は(感)  1u-10-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2020/09/15 12:30:52
 第二次大戦はデモクラシーとファシズムの
戦争だった。これがいまの歴史教育の基本で
ある。こんな大嘘はない。
 あの戦争ではアメリカとソ連が手を結び、
同じ側に立ったのである。アメリカがデモク
ラシーであることに異論はないが、スターリ
ンのソ連をデモクラシーと言ったら、噴飯も
のである。
 第二次大戦をデモクラシー対ファシズムの
構図にしたのは、アメリカの戦時プロパガン
ダである。プロパガンダは事実である必要は
ない。嘘でも何でも、目的を達成すればいい
のである。アメリカはこのプロパガンダで戦
争の正当性を主張し、デモクラシーの価値を
守るための戦いだと言って国民の士気を鼓舞
し、目的を達したの だ。
 では、第二次大戦はどういう戦争だったの
か。アルタルキーの国と非アルタルキーの国
の戦争だったのである。
 アルタルキーの国とは、近代産業を支える
ための天然資源を自国内や植民地内に持って
いる国のことである。逆に非アルタルキーの
国はそのための天然資源を持っていない国を
いう。
 あの戦争をアルタルキーの国対非アルタル
キーの国のぶつかり合いと見ると、全体像が
はっきりする。
 アメリカ、イギリスはもちろん、ソ連もフ
ランスもオランダも、いわゆる連合国側に入
る国はすべてアルタルキーの国である。それ
に対峙した日本もドイツもイタリアも非アル
タルキーの国である。アルタルキーの国はブ
ロック経済で関税を高くし、非アルタルキー
の国を締めあげた。しかし、関税を高くする
ぐらいは耐えられた。すると、今度はアルタ
ルキーの国は非アルタルキーの国に天然資源
を売らないとなった。航海条約が破棄され、
貿易が遮断された。こうなってはたまらない
。ついに爆発して戦争になった。これが事実
である。ところが、デモクラシー対ファシズ
ムの戦争というアメリカの戦時プロパガンダ
を鵜呑(うの)みにして、歴史教育は行われ
ている。デモクラシーとファシズムとでは、
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
明らかにデモクラシーが善であり、ファシズ
ムが悪である。従って、ファシズムの側にく
くり込まれた日本は悪者ということになる。
 (中略)
 いま約百六十か国の独立国が国連に加盟し
ている。こんなに独立国が増えたのは戦後の
ことで、しかもそのほとんどは有色人種の国
である。これは日本がアメリカとがっぷり組
んで横綱相撲を取った結果なのだ。
 連合国側に与(くみ)した白人国家は有色
人種の国を独立させる意志はなかった。事実
、戦後日本が東南アジアから引き揚げたあ 
と、イギリス、フランス、オランダなどは軍
隊を送り、もう一度東南アジアの国々を植民
地にしようとした。
 だが、それはできなかった。東南アジアの
人びとが、日本の勇敢な戦いの前に敗北する
白人たちを目(ま)の当たりにして、白人に
有色人種が勝てることを知り、敢然と抵抗し
たからである。
 ビルマやフィリピンは日本の統治下で日本
の協力のもとに独立した。その波はインドか
らアフリ力に及び、そして独立した有色人種
国家が国連などで活躍するのがアメリカの黒
人を勇気づけ、市民権獲得となっていった。
 つまり、すべての人類は平等とする波が起
こったのは戦争の結果であり、その起点とな
ったのは日本なのである。
(「致知」九十七年二月号 渡部昇一氏の文
章より)