長文集  12月2週  ★景気動向の二つ目の(感)  1u-12-2
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2020/09/15 12:30:52
 景気動向の二つ目のポイント、個人消費に
ついてです。GDP(国内総生産)の六十%
が個人消費ですから、この動きがどうなるか
は重要です。
 個人消費には明らかに新しい動きが出てい
ます。個人消費の九十%が女性にかかってい
るということです。
 GDPの六十%を占める個人消費。その九
十%に関わる女性。これからの世の中の流れ
を作っていく主導権が女性に委ねられたこと
がわかります。
 世の中の流れが女性の力で作られるように
なったのは、給料が銀行振り込みになってか
らです。そして、その普及に比例して強まっ
てきました。
 このことは一つの傾向としてこれまでも言
われてきたことでし た。だが、世の中の流
れを作る主導権が女性に委ねられていること
は、いまや傾向とか趨勢とかの段階ではあり
ません。確かな事実なのです。
 このことがつかめれば、どうすればうまく
いくかがわかってきます。
 これまで人びとはマスメディアを媒介にし
てモノを買いました。マスメディアに乗るか
乗らないかで、大きく売れ行きが違いまし 
た。
 しかし、女性はマスメディアとはほとんど
無縁です。女性はクチコミによって動くので
す。女性とクチコミは一体だと言っていいほ
どです。
 また、女性の購買行動を観察すれば、すぐ
にわかることがあります。女性はとことん検
討して買うのです。
 私もそうですが、男性はたとえばスーツを
買うとき、ある店に行きます。サイズもまず
まず、色も無難、値段はちょっと高いといっ
たスーツが目に入ります。すると、まあ、こ
れでいいか、と買ってしまいます。男性の買
い方はだいたいこんなものです。
 女性はこんな買い方はしません。店を五、
六か所めぐり、デザイン、サイズ、色、品質
、値段とあらゆる面を徹底的に比較、検討す
るのは普通のことです。気に入らないと買い
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ません。だから必然的に、本物だけが売れる
ということになります。
 昨年十月に開催した“フナイ・オープン・
ワールド”では、世の中の主導権が女性に委
ねられていることを痛感しました。たとえ 
ば、約百社が出展した未来型商品や面白い商
品です。正直に言っ て、その中には私の目
から見て、少し気になるものもいくつかあり
ました。しかし、出展料をいただいているこ
とではあるし、と特別気にしませんでした。
 ところが女性は、あんなつまらないものを
何で出したのか、こんな偽物を出すなんて、
と遠慮会釈のない声をどんどん寄せてきま 
す。女性はその場で瞬時にいいものと悪いも
のを見分けるのです。本当に怖いと思いまし
た。
 以上のことから、女性主導の流れをつかま
え、うまくやっていくにはどうすればいいか
がわかります。
 小売業の場面で言うと、最初に述べたよう
に、明るくすることです。暗いイメージは徹
底的に排除しなければなりません。そして、
クチコミで売ることです。本物を志向するこ
とです。
 では、男性はどうすればいいのか。あるモ
ノが売れたり、客が集まってきたり、という
現象が出てきたら、それをどう生かすかを考
えるのが男の役割です。男性が流れを作ろう
としたりしてはいけません。そういう世の中
になってきた、いや、そういう世の中になっ
ているということを、しっかり受け止めるべ
きです。
(「致知」九十七年二月号 船井幸雄氏の文
章より)