長文集  12月3週  ★私は、特に小売業に(感)  1u-12-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2020/09/15 12:30:52
 私は、特に小売業に詳しいのですが、小売
りの店頭から見て、いまこうやればうまくい
くということが三つあります。(1)明る 
い、(2)女性とクチコミ中心、(3)本物
志向がそれです。
 いま、暗い店は売れません。店内の地上一
メートルのところで二千ルックスの明るさの
売り場がよい、とアドバイスしています。 
三、四年前までは一千ルックスで十分でした
。だが、いまは千五百ルックス以下ではがく
んと売れ行きが落ちます。暗い店はだめなの
です。
 去年、私はたくさん本を出しました。私の
本はほとんどが数万部以上はたちまち売れま
す。ところが、一冊だけ売れない本がありま
した。『死中に活路を』(日本実業出版刊)
という本です。バブル崩壊から立ち直った二
十人の話に私のコメントを入れたもので、い
い本なのですが、一万数千部出たところで止
まってしまいました。題名にある「死中」と
いう言葉がいけなかったようです。
 「女性とクチコミ」「本物志向」につきま
してはあとで詳しく触れますが、これに「明
るさ」を加えた三つが、これからうまくいく
ための欠かせない要素である、そういう流れ
がある、ということです。
 経営環境の今後の流れがどうなるかも押さ
えておきましょう。
 日本の景気がよくなるには二つのポイント
があります。一つは土地の値段が下げ止まる
こと、もう一つは個人消費が上向くことで 
す。
 土地の値段は向こう十年は下げ止まらない
、というのが私の意見です。いや、二十年か
かるかもしれません。
 銀行の頭取さんの知り合いが何人かおり、
時折一緒に食事しながら話をします。そうい
う場では、本音が出ます。そこでわかるので
すが、みなさん、私と同じように考えている
のです。
 そもそもバブル経済になったのは、土地の
値段があがったからです。それが崩壊したの
ですから、後遺症の後始末がきちんとつかな
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いと、土地の値段は下げ止まらない、という
のは簡単にわかることです。きちんと後遺症
を処理するには、最終的に銀行が責任をすべ
てとらなければなりません。
 いまは住専処理の方向に一つの線が出てき
たところです。それで終わりではありません
。住専が処理されたら、次はゼネコンです。
ノンバンクです。これらの後遺症をひとつひ
とつ片づけていくと、最後は銀行に行き着き
ます。銀行の後遺症がきちんと処理されて、
はじめてバブルの後遺症は完全に解消するの
です。
 銀行の頭取さんの多くは「私もサラリーマ
ン経営者だから、任期中にバブルの処理など
やりたくない」という気持ちを抱いていま 
す。どうしても先へ先へと延ばすことになり
ます。だから、バブルの始末が銀行に回って
きて、最終的に処理されるのは早くて十年、
ことによったら二十年かかる、というのは順
当な見方なのです。
(「致知」九十七年二月号 船井幸雄氏の文
章より)