長文集  3月3週  ★みよこちゃんは(感)(できるだけ自由な題名で)  e-03-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/12/14 16:57:55
 【1】みよ子ちゃんは、このあいだから、
こっそりおもいつづけていることがあります

――いっちゃおうかな……と、夜になるとお
もいます。でも、ちょっとはずかしくって、
いえないのです。けれど、きょうは星のとく
べつにきれいな夜でした。【2】そこで、み
よ子ちゃんは、とうとう、おねだりしたので
す。
――ね、おとうさん、おねがい。
 ほほう……と、おとうさんは、めずらしそ
うにふりむきました。
――あれ、とって。
 みよ子ちゃんは、空にたくさんある星をゆ
びさしました。
 【3】あははは。おとうさんはわらって、
――あれは、だめ、星だもの。
 みよ子ちゃんのかおはクシャンとゆがんで
、べそをかきました。どうして星ならだめな
のかしら。
 おにいちゃんなんか、あんな高いところを
とんでるトンボでも、ひょいとつかまえてく
るのに……。
【4】――あれはね、とってもとおいところ
にあってとても大きいんだ。
 けれどもみよ子ちゃんには、おとうさんの
せつめいなぞ耳にはいりません。おもいつづ
けていたことを、やっといったのに、あはは
は、とわらわれちゃったんですからね。
 【5】みよ子ちゃんはだまって家をでてい
って、うしろの丘にのぼりました。空の星に
、いっそうちかくなった気のするところで 
す。そして、そこにしゃがんでなきはじめま
した。
 エーンエンエンエン
 【6】大きななみだが、ポタンポタンとお
っこちて、土(つち)にすいこまれてゆきま
す。すると、そのへんでへんな音がするので
す。
 コボン、コボ、コボ、ポコン
 みよ子ちゃんはきみがわるくなって、なき
やみました。【7】そしてたちあがったとた
ん、ポウン……と、足もとの土(つち)がは
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ねのけられて、みょうないきものがかおをだ
しました。
――えへへ、ぼく、モグラだよ。
 モグラなんて、しりません。∵
 【8】けれどモグラのほうは、いっこうに
へいきでつづけまし た。
――みよ子ちゃんが、あんまりなみだをおと
すんで、ぼくの家のまえの道ね、そこの天井
がゆるんじまうんでね。
――あら、ごめんなさい。
――みよ子ちゃんはあやまりました。
【9】――だって、わたし、そんなところに
おうちや道があるなんて、気がつかなかった
んだもの。
 するとモグラは、みじかい手をふって、い
やいや、べつにあやまってもらわないでも…
…。そこでふたりは、はなしはじめました。
【0】そしてみよ子ちゃんが星のことをいう
と、モグラは、なあんだ、といったかおつき
でいうのです。
――ようがす。
 それからくるりとまわれ右、五分もしない
うちに、また穴からかおをだすと、
――これですよ、かけらしかとれませんでし
たがね。
 ひょいとさしだしたのは、土(つち)のか
たまりです。こんな土(つち)なんて、と、
みよ子ちゃんがうけとらないでいると、モグ
ラはいうのです。
――だってこの地球も、星の一つなんですよ
。空のむこうからみれば、あおく光って、く
るくるまわってるんです。
 へええ、そうなの、と、みよ子ちゃんはお
もいました。

「ぽけっとにいっぱい」『星をもらった子』
より(今江 祥智)フォア文庫