1. 【1】
みよ子ちゃんは、このあいだから、こっそりおもいつづけていることがあります。
2.――いっちゃおうかな……と、
夜になるとおもいます。でも、ちょっとはずかしくって、いえないのです。けれど、きょうは
星のとくべつにきれいな
夜でした。【2】そこで、
みよ子ちゃんは、とうとう、おねだりしたのです。
3.――ね、おとうさん、おねがい。
4. ほほう……と、おとうさんは、めずらしそうにふりむきました。
5.――あれ、とって。
6.
みよ子ちゃんは、
空にたくさんある
星をゆびさしました。
7. 【3】あははは。おとうさんはわらって、
8.――あれは、だめ、
星だもの。
9.
みよ子ちゃんのかおはクシャンとゆがんで、べそをかきました。どうして
星ならだめなのかしら。
10. おにいちゃんなんか、あんな
高いところをとんでるトンボでも、ひょいとつかまえてくるのに……。
11.【4】――あれはね、とってもとおいところにあってとても
大きいんだ。
12. けれども
みよ子ちゃんには、おとうさんのせつめいなぞ
耳にはいりません。おもいつづけていたことを、やっといったのに、あははは、とわらわれちゃったんですからね。
13. 【5】
みよ子ちゃんはだまって
家をでていって、うしろの
丘にのぼりました。
空の
星に、いっそうちかくなった
気のするところです。そして、そこにしゃがんでなきはじめました。
14. エーンエンエンエン
15. 【6】
大きななみだが、ポタンポタンとおっこちて、
土にすいこまれてゆきます。すると、そのへんでへんな
音がするのです。
16. コボン、コボ、コボ、ポコン
17.
みよ子ちゃんはきみがわるくなって、なきやみました。【7】そしてたちあがったとたん、ポウン……と、
足もとの
土がはねのけられて、みょうないきものがかおをだしました。
18.――えへへ、ぼく、モグラだよ。
19. モグラなんて、しりません。∵
20. 【8】けれどモグラのほうは、いっこうにへいきでつづけました。
21.――
みよ子ちゃんが、あんまりなみだをおとすんで、ぼくの
家のまえの
道ね、そこの
天井がゆるんじまうんでね。
22.――あら、ごめんなさい。
23.――
みよ子ちゃんはあやまりました。
24.【9】――だって、わたし、そんなところにおうちや
道があるなんて、
気がつかなかったんだもの。
25. するとモグラは、みじかい
手をふって、いやいや、べつにあやまってもらわないでも……。そこでふたりは、はなしはじめました。【0】そして
みよ子ちゃんが
星のことをいうと、モグラは、なあんだ、といったかおつきでいうのです。
26.――ようがす。
27. それからくるりとまわれ
右、五
分もしないうちに、また
穴からかおをだすと、
28.――これですよ、かけらしかとれませんでしたがね。
29. ひょいとさしだしたのは、
土のかたまりです。こんな
土なんて、と、
みよ子ちゃんがうけとらないでいると、モグラはいうのです。
30.――だってこの
地球も、
星の一つなんですよ。
空のむこうからみれば、あおく
光って、くるくるまわってるんです。
31. へええ、そうなの、と、
みよ子ちゃんはおもいました。
32.「ぽけっとにいっぱい」『
星をもらった
子』より(
今江 祥智)フォア
文庫