長文集  8月1週  ○二、三年前、小学高学年の(感)  hi2-08-1
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2010/06/14 15:02:34
 【1】二、三年前、小学高学年の子どもた
ち三〇〇人に、どんな公園、どんなあそび場
が欲しいかという絵を描いてもらったことが
ある。その時子どもだけしか入れない公園が
欲しいというのがかなりあった。
 【2】児童公園など、あそんでいるのは子
どもがほとんどなの に、と思うのだが、子
どもたちに言わせれば、児童公園には大人も
たくさん来て、野球をしちゃあいけない、木
に登ってもいけないなど、いろいろ言う。
 【3】そのくせ、自分たちはゲートボール
とかゴルフの練習とかして、危ないから向こ
うであそべという。そういうのでなく、子ど
もだけで自由に勝手にあそべる公園が欲しい
というわけである。
 【4】なるほど、いま子どもたちにとって
、大人から全く干渉されない空間はほとんど
ない。子どものための施設、子ども用の施設
というのはある。しかし多くの場合、大人が
管理している子どもの施設である。子どもが
大人から離れて、自立的に持っている空間は
ない。
 【5】私の子どものころは、何をどうしよ
うと大人たちからあれこれ言われないあそび
場がたくさんあった。防空壕や空き地や裏山
や、さまざまな所に子どもたちだけの秘密の
場所を持っていた。大人も子どもに干渉する
ほど暇ではなく、忙しかった。
 【6】かつて、子どものころの秘密の場所
とか秘密の小屋とか子どもだけの場所をアジ
トスペースと名づけて調査をしたことがあ 
る。ほとんどの大人は子どものころそういう
ものを持っていたし、集団でよくあそんだと
答えた。【7】一五年ほど前、子どもたちに
同じ質問をしたところ、一〇人に一人しか持
っていなかった。特 に、都市部の子どもた
ちは少なかった。横浜で一九八九年に調査し
たところ、子どもたちは全員そういう場所を
持っていなかった。
 【8】かつては子どもだけの場所、言うな
れば子どもの独立国が町や村のそこここにあ
ったのである。昔、私たちはそこで自立心を
学んだのだろう。ところが今、それらは大人
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たちによって滅ぼさ れ、植民地のようにな
っているのかもしれない。∵
 【9】今の子どもたちは自立心がない、独
立心がない、と大人はよく言う。その心を育
てる空間を自分たちが奪ってしまっているこ
とを忘れている。子どもたちが自由な独立国
をつくれるような、都市や環境のゆとりのあ
る改造が必要だろう。
 【0】昔も今も、子どもたちは大人から干
渉されない自由なあそび場を求めているはず
だ。

(仙田(せんだ) 満(みつる)「子どもと
あそび」より)