1.【1】「早く
夜にならないかなあ。」
2.ぼくは、そうつぶやきました。
3.「また
言ってる。これで
何回目?」
4.
お母さんは、おかしくてたまらないという
顔をして
笑いました。
今日の
夜は
夏祭りなのです。ぼくは、カレンダーに赤のペンで
丸をつけて
楽しみにしていました。【2】
綿あめに
かき氷、
たこ焼きにチョコバナナなど、いろいろなものを
食べられるのです。
5. ついに
待ちに
待った
夜です。
お母さんがくれた五百円をお
財布に入れて、ぼくは
校門に
急ぎました。【3】
校門に
着くと、コウジとユウキが
待っていて、ぼくを見つけると、
6.「おう、早く
行こうぜ。」
7.と
僕をひっぱりました。たくさんのちょうちんがぶら下がっていて、いつもの
校庭ではないみたいです。まるでおばあちゃんの
家の
近くの
商店街みたいだなと
思いました。
8. 【4】
何を
食べようかときょろきょろしていると、ソースのこげるにおいが
漂ってきました。ぼくたち三人は、
9.「いいにおいだなあ。
焼きそば食べよう。」
10.と、
鼻をクンクンさせながら
列に
並びました。ぼくとユウキが先に
買って、コウジの
順番になりました。【5】コウジは、お
店のおじさんに、
11.「いっぱい入っているのをください。」
12.と
お願いしたので、ぼくとユウキは、
思わず顔を
見合わせて
笑ってしまいました。コウジは、クラスの中でも
食いしん坊で
有名なのです。【6】おじさんは、
重なった
焼きそばの中からひとつひっぱりだして、
13.「これはたくさん入ってるだろ。」
14.と
言いました。ぼくは、うらやましいなあと
心の中で
思いまし∵た。もしぼくがコウジだったら、あんなふうに大人に
お願いできません。【7】なんだか
恥ずかしいからです。
お母さんにもよく、ぼくは
引っ込み思案だと
言われているのです。
15.
焼きそばは、
家で
食べるよりも
味が
濃くて、
お祭りの
焼きそばの
味がしました。
お母さんの
作る焼きそばもおいしいけれど、ぼくはこういう
焼きそばも
好きです。【8】
多分、
お父さんも
屋台の
焼きそばの
方が
好きだと
思います。どうしてかというと、
濃い味が
好きだからです。
16. そのあとは、カキ
氷とチョコバナナを
食べました。チョコバナナを
買うときのことです。ぼくは、大きいのが
食べたいなあと
思いました。【9】ぼくは、
思い切って、
17.「ちょっと大きめなのをください。」
18.と
言ってみました。
胸がドキドキしました。お
店のおばさんは、
19.「じゃあ、大きそうなのを
選んでいいよ。どれがいい?」
20.と、ぼくに
選ばせてくれました。ぼくは
飛び上がるほど
嬉しくて、
一番長いと
思うものを
指差しました。【0】おばさんから
受け取るとき、いつもよりずっと大きい
声で
21.「ありがとうございます。」
22.と
言えました。
少しお
兄さんになった気がしました。そのチョコバナナは、いつものチョコバナナよりもずっとおいしかったです。
23.(
言葉の森
長文作成委員会 ω)