1. 【1】
夏休みに、
私と
弟の二人だけで、
京都のおばあちゃんの
家に
行くことになりました。
今年から
お母さんが
仕事を
始めたので、
子供だけで
行くことになったのです。
子供だけで
新幹線に
乗るのは
初めてです。
私は
楽しみで
仕方ないのに、
お母さんは
何だか不安そうです。
2.【2】「ほんとに
寝ちゃ
駄目よ。
大丈夫ね。」
3.
お母さんが
何度も
私の
顔をのぞきこんで
言いました。
私は、
自信満々で、
4.「
大丈夫だよ。
心配いらないから。」
5.と
言いました。
お母さんは、でもまだ
不安そうな
顔で、
6.「
頼んだからね。ハルが
寝ちゃったら早めに
起こしてね。」
7.と
繰り返します。【3】
お母さんは
本当に心配性なんだからと
心の中で
思いました。
8.
新幹線に
乗るときは、いつもシウマイ
弁当を
食べます。
私はシウマイが
大好きなので、このお
弁当は大
好物です。
売店で、シウマイ
弁当と
お菓子を
買いました。【4】
私はチョコレート、ハルはグミです。それを
抱えて
新幹線に
乗り込みました。
9. ドアのところで
お母さんがまた
心配そうな
顔をしたので、
私とハルは、
元気いっぱいに手を
振りました。
切符を見ながら
席を
探して、
座るとすぐにお
弁当を
食べる用意を
始めます。
10.【5】「いただきます。」
11.二人で手を
合わせました。わくわくしながら
蓋を
開けると、シウマイが五つ
並んでいます。まるで
仲良く座っているみたいです。
12.「やっぱり
新幹線に
乗ったらシウマイ
弁当だよね。」
13.
私は、ハルに
言いました。【6】ハルも、∵
14.「ぼくも
大好き。」
15.と
言いながら、一つ目のシウマイをパクリと口に入れました。
私は、おいしいものは
最後に
味わって
食べるのが
好きです。お
行儀が
悪いと
渋い顔をする
お母さんもいないので、
私は五つ
全部を
取っておくことにしました。
16. 【7】
私がとっておきのシウマイに
箸をつけようとしたときです。ハルが、
17.「ああっ。」
18.と
叫びました。
驚いた
私の
足元を、コロコロとシウマイが
転がっていきます。ハルの
落としたシウマイでした。それも、
最後の一つです。ハルは
今にも
泣き出しそうな
顔をしています。【8】なんだかかわいそうになり、
私は
自分のシウマイを一つ、ハルにあげました。もし
お母さんが
一緒なら、
お母さんが
自分のシウマイを
分けていたと
思います。ああ、早く
食べてしまえばよかったなあと
残念に
思いましたが、ハルがとても
喜んだのでよかったです。【9】それに、
通路をはさんで
隣に
座っていたおばあさんが、
19.「さすがお
姉ちゃん、
偉いわね。」
20.と
声をかけてくれました。
恥ずかしかったけれど、
嬉しかったです。ハルは、シウマイの
お礼だと
言って、
自分のグミを
半分分けてくれました。ハルもいいところがあるなと
思いました。
21. 【0】本を
読んだり、しりとりをしたり、なぞなぞを
出し合ったりするうちに、
いつの間にか京都に
着きました。
お母さんはまだ
心配しているかなあ。
京都に
着いたことを早く
伝えたいなと
思いました。
22.(
言葉の森
長文作成委員会 ω)