長文集  6月1週  ★人間の生涯は物事を(感)  ma-06-1
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2015/03/16 04:08:30
【一番目の長文は暗唱用の長文で、二番目の
長文は課題の長文で す。】
 【1】机の横にコピーに使った紙が積んで
ある。裏の白いところを生かしてメモ用紙に
しているのだ。何か用事を思い出すと、さっ
とメモをとる。計算用紙のかわりにもなるし
、作文の構成用紙のかわりにもなる。【2】
折りたたんで暗唱用紙のかわりにすることも
できる。一枚の薄い紙が、いろいろな形で役
に立つ。この紙にひとまとまりの文字を載せ
ると、文章の書かれた紙となる。手紙やレポ
ートは、だれかに自分の考えを伝える道具だ
。【3】その道具をいちばんの土台で支えて
いるのが、この紙とペンである。私は、この
紙のように、さまざまな情報を載せることの
できる教養の大きな受け皿になりたい。
 そのためには第一に、白紙のように、何で
も素直に受け入れる心を持つことだ。【4】
日本の昔話に「わらしべ長者」がある。一本
のわらにアブをつけて持っていた男が、その
わらしべをミカンと交換する。やがて、その
ミカンを反物と交換し、反物を馬と交換し、
馬と交換に家をもらう、という話だ。自分自
身の教養を高めるためには、このように何で
も素直に受け入れる心が欠かせない。【5】
世の中には、相反する意見や情報も多い。そ
れらを先入観なく受け止める心の広さが必要
なのだ。
 第二の方法は、逆に、素直に受け入れたも
のの中から、自分に必要なものを選択する勇
気だ。【6】日露戦争は、日本の命運を決め
る戦争だったが、この戦争を遂行した日本の
リーダーたちが共通して持っていたものは、
困難な選択を敢えてする勇気だった。日本が
立ち上がることによって初めて東アジアはロ
シアの支配をはねのけ自立することができた
。【7】また、日本の勝利は世界の有色人種
の自覚を促し、その後の世界史の流れを変え
た。何でも受け入れる素直な心は、選択し決
断する勇気と組み合わされることによって初
めて価値あるものとなる。∵
 確かに、自分の得意な特定の専門分野を持
つことも必要だ。【8】それは、紙で言えば
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、自由に書き込める白紙ではなく既に印刷さ
れた紙だろう。情報が印刷された紙には、そ
れなりの価値がある。しかし、それは、その
特定の目的以外に使うことができない。【9
】新聞紙の場合は、印刷されていても、弁当
の包み紙に使うこともできるが、それは本来
の用途とは言えない。私たちに必要なのは、
たくさんの古新聞ではなく、たくさんの白紙
だ。机の横に積まれたメモ用紙を生かして、
自分らしい広い教養を育てていきたい。【0


(言葉の森長文作成委員会 Σ)∵
 【1】人間の生涯は物事を学び続ける果て
しない旅である。この世に生まれた瞬間から
、人間は学び始める。いや、それ以前、母親
の胎内ですでに学習は始まっているらしい。
そして、人生八十余年を迎えても、何事かを
学ぼうとする。
 【2】ある学者は、研究報告書のなかで、
人間が最もすばらしい学習能力を発揮するの
は生まれてからの数年間であるとのべてい 
る。なにしろ、子供は、言葉という、ホモ=
サピエンスがつくりあげたもののうちで最も
複雑なものを、わずかな期間で習得してしま
う。【3】言うまでもなく、赤ん坊は決して
本能によって言葉をしゃべるのではなく、学
習して覚えていくのであり、置かれた状況し
だいで、世界中のどの言語でも覚えてしまう
のである。このような幼児期における言語の
習得を出発点として、幼年期から青年期へ、
中年期から老年期へと、生涯にわたって学習
は続く。
 【4】何事かを学ぶことができるというの
は、生物として優れた能力をもっているしる
しである。猫や犬もものを学ぶという優れた
能力をもった動物ではあるが、彼らは、生涯
の早い時期に学ぶことをやめてしまっている
ように思われる。【5】人間が他の動物と比
較して異なることの一つは、いつまでも学び
続けるという点にあ る。
 ものを学ぶとは、何か新しいことを知った
り、何か新しい能力を身につけたりすること
、そして、それらをさらに深めたり高めたり
することである。【6】人間が生涯にわたっ
て学び続けていくに は、エネルギーとなる
何かがなければ、それは容易なことではな 
い。では、そのエネルギーとなるものは何か
。たとえば、花の名前を一つ知ったとする。
すると、野原一面に咲き乱れる花の中から、
その花を探す楽しみが生まれ、見つける喜び
が生まれる。【7】もっと多くの花の名前を
知れば、探す楽しみや見つける喜びは増大す
ることになる。つまり、このような楽しみや
喜びが、エネルギーとなるのである。
 【8】それぞれ、学び方や学びとるものの
違いはあれ、このエネルギーが、さらに学習
意欲をかきたてる。学校や家庭での勉強だけ
が勉強ではない。人生のさまざまな場面で、
さまざまな状況のなかでいつも勉強がある。
【9】学ぶエネルギーを実感するためにも、
人間は、いつまでも学び続ける人生を送るの
である。人間が味わう∵充足感や感動の大半
は、ものを学ぶことから生まれるのではなか
ろうか。【0】

(注)ホモ=サピエンス…人間の動物学上の
名称