1. 【1】ゴミの問題は、
限りある
資源をどのように
有効に使うかという大きな課題にもつながっている。ゴミは、物の持ち主から、「おまえはもう役立たずだ。」という、お
払い箱
判決を受けたものだ。【2】しかし、ある一人の人の、ある一つの目的にはもう役に立たなくなっても、ほかの目的には、あるいはほかの人には、じゅうぶんに役立つことがある。例えば、
木製のいすは
壊れてしまえば、それに
座るという目的は達せられない。【3】しかし、いすに使われている木はじゅうぶんに
乾燥していて、
狂いがこなくなっている。木工の材料としてみたら、なかなか
値うちのあるものである。木工の仕事をしている人にとっては、ぜひとも
欲しくなるほどの材料だといってもよい。【4】それなのに、いすの持ち主がこれはもう要らないと
判決を下すと、それがゴミとして集められて、
焼却されてしまうというのでは、ずいぶんむだをしていることになる。【5】こういうむだをできるだけ小さくしていくこと、つまり、一つの目的には役に立たなくても、それが役立ちそうなほかの
用途を見つけ出して、物をできるだけ長く生かしてやること、これは、ゴミを少なくするだけでなく、
資源を
有効に使うことにもなるわけである。
2. 【6】もちろん、物を
捨てることにもプラスの面がないわけではない。古いものは不要だと考えて、次々に新しいものに
替えていくという
新陳代謝が
盛んであると、次々に
需要が生み出されて、
経済活動が活発になる。【7】これはこれでプラス面である。しかし、その反面として
怖いのは、みんなが「
使い捨て式」で物を
捨てていくならば、
経済の中に
蓄えられていくものがなくなるということである。【8】せっかく作り出した物、せっかく買ったものをすぐ「不要だ。」と
判決を下して
捨ててしまうのでは、また同じ物を作ったり買ったりすることに
精力を使わなくてはならない。【9】一度作り出したり買ったりしたら、今度は別の物を作ったり買ったりするのに
精力を使ってこそ、物は本当に
豊かになっていくのである。何も
蓄えられた物がなくて同じ物を
繰り返し繰り返し手に入れようとあくせくするようでは、生活に進歩は生まれない。【0】∵
3. 日本のことわざに、「
捨てる神あれば拾う神あり。」という。これをもじっていえば、わたしたちはどんどん紙を
捨ててゴミを作り出しており、「
捨てるカミ(紙)」がいっぱいなのだから、そういうゴミを「拾うカミ(神)」がいてくれなくては
困るのである。
4. しかし、そういう神様は、どこか空の高い所に住んでいるのでもなくどこかの
ほら穴に
潜んでいるのでもない。人間が
知恵を出して生み出さなければならないものである。
5. 物を作るときには、
再生利用することを初めから考えて作るというのも、神様を生み出す方法の一つになるだろう。できるだけ長持ちする
製品を
割安にするようにくふうするのも、その一つだろう。今いろいろな
知恵を出し合って、ゴミをできるだけ少なくし、
資源を
有効に使うようにしないと、やがて人間そのものが地球から
捨てられてしまうかもしれないのである。
6.(岸本
重陳の文章より)