長文集  1月1週  ○アフリカの田舎を  ne2-01-1
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2010/10/15 15:53:10
 【1】アフリカの田舎を自転車で訪れると
、珍客が来たということで歓迎され、村にあ
るとっておきのゴリラ、サル、芋虫、ナマ 
ズ、ヤマアラシなど貴重な食べ物でもてなさ
れた。
 【2】ある日、目的地の村に到着して泊め
てもらうことになり、いつものように晩ご飯
を待っていたが、日が暮れてもいっこうに声
がかからない。おかしいな……、と思いなが
らお腹が空いていたので手持ちの食料を食べ
た。
 【3】そのときの体験を小学校の子どもた
ちに話して、「どうしてご飯を出してもらえ
なかったんだと思う?」と聞く。すると子ど
もたちは一生懸命考えて、
 「村にご飯がなかったから」
 「知らない人だからご飯を出さなかった」
 【4】「ご飯を出さないで、達さんがどん
な反応をするか見ようと思ったから」
 「獲物を獲(と)りに行っていたから」
という答えをくれる。相手に理由や原因があ
る、という考え方だ。
 ところが質問をしていると、ひとりの男の
子が小声で「自分の挨拶が足りなかったから
」と答えたことがあった。【5】これはとて
も大切な考えだと思う。自分の方にも何か原
因があったかもしれない、何かできることが
あったかもしれない、という考え方だ。
 僕の前述の問いに対する答えは、「毎日ご
飯を食べさせてもらうのがいつの間にか当た
り前になってしまって、感謝の気持ちがなか
った。【6】だからそんな人にはご飯を出さ
ない、と思われたのかもしれない」というも
のだ。主張するのも大事だが、人の家で食べ
させていただくのに感謝の気持ちがなかった
、きちんと挨拶していなかった、相手に失礼
なことをしたなど、もしかしたらこちら側に
問題があったかもしれないと考えることを伝
えたい。【7】なんでも人のせいにしている
と最後にはなにも見えなくなり、夢や目標が
あっても実現させることができなくなってし
まう。僕がそう話す と、子どもたちは静ま
り返って真剣な顔で聞いている。∵
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 【8】自転車世界一周というと自分には関
係のない話だと思われるかもしれないが、き
ちんと挨拶したり、自分の行動に責任を持っ
たりする点では普段の生活と変わらない。子
どもたちはこの辺を敏感に感じ取ってくれる
。【9】そして、「これからは挨拶をきちん
としよう」とか、「人のせいにするのはやめ
よう」という感想文をくれ、先生方も「子ど
もたちが前より挨拶するようになりました」
と言ってくださることがある。
 【0】また中高生になると、受験も、就職
も、クラブも、人間関係も、無意識でも最終
的には全部自分で決めている、と話すことが
ある。挨拶したらどうなるか? お礼をしな
かったらどうなるか? 自分にできることは
なかったか? いい答えを聞きたかったらい
い聞き方をしなくてはいけないなど、自分の
行動一つで展開に大きな違いが出てくること
を体験から伝える。つまり未来は自分次第で
いくらでも変わるという考えだ。
 僕も最初はギニアで井戸を掘るのは相当困
難だと思っていた。経験も知識もネットワー
クもない自分が、ほとんど部族語しか通じな
い山村でひとりでプロジェクトを起こすのだ
から。
 でも目的を持ってできることを一つずつや
っていたら、いろんな出会いや出来事に恵ま
れて井戸掘りが実現に向かった。小さな行動
を積み重ね、あきらめなければいろんなこと
ができる。

(坂本達『やった。』より)