1. 【1】九二年度末の時点で、この国には一万九四二個もの規制があったといわれる。規制は、政官業
癒着の構造を
磐石のものとする主因でもある。近時、「規制
緩和」の大合唱が
巷間にこだまするようになったが、すべての規制が「悪」というわけでは必ずしもない。
2. 【2】規制の中には、安全、
環境保全、弱者保護、経済的不正の防止、景観保全、自然保護などをねらいとする「必要」な規制が数多くある。【3】しかし、あってもなくてもいいような規制、健全な自由競争を
阻害する規制、不必要にきびしすぎる規制、利権の
温床となる規制など、
緩和ないし
撤廃することが望ましい規制が、少くとも過半を
占めているとみてよい。
3. 【4】そうした規制の多くは、中央官庁の許認可権限につらなり、許認可権限があるからこそ、中央官庁は民間
企業へのにらみを利かすことができる。【5】とどこおりなく許認可を
獲得するためには、好むと好まざるとにかかわらず民間
企業は、
監督官庁からの「天下り」を受け入れざるをえないといわれる。また、ここ一番というときには、族議員のたすけを借りるのがいちばん手っとり早かった。
4. 【6】要するに、許認可行政の肥大化こそが、政官業三者の
癒着を強固なものとする接着
剤の役割を果たしたのである。【7】「官」と「業」とのあいだに橋をかけるのが「政」の役割であり、その役割を果たしてきたうえで、ひとかどの
報酬を「政」が「業」に要求するのは、少なくともついこのあいだまでは常識と目されていた。
5. 【8】あらためて
指摘するまでもなく、許認可権限を
核とする政官業
癒着の構造こそが、市場を
不透明かつ不公正なものにする
元凶のひとつに数えられる。とはいえ、先に
指摘したように、あらゆる許認可が「悪」というわけではない。【9】問題なのは、許認可をめぐっての族議員の
暗躍が、行政を
不透明化し、民間
企業に
途方もない時間的コストと経済的コスト(そのツケは消費者に回される)を
支払わせ、許認可のサジ加減の次第が行政を不公正にするという点である。【0】もし仮に許認可権限がまったくフェアに
執行されるならば、規制の
緩和・
撤廃の大合唱が起きたりはしないはずである。∵
6.(
佐和隆光『平成
不況の政治経済室』)