長文集  10月1週  笑いながら食べるごはん  nu-10-1
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2015/10/16 16:42:29
 【1】「泣きながらごはん食べると、おい
しくない」。小さいとき、どこかでそんな歌
を聞いた。 
 歌の内容は、もうすっかり忘れてしまった
のだが、そのワンフレーズだけはよく覚えて
いる。きっとその当時から、「それはそうだ
なあ」と実感し、納得していたのだろう。 
 【2】両親にしかられたり、友達とけんか
をしたり、先生にお説教をされたりしたあと
に食べるご飯は、確かにおいしくない。悲し
いとかくやしいとか、そんな重苦しいものが
お腹にズウンとつまっているようで、食欲す
らわいてこないこともある。
 【3】もしかしたら、どんなに嫌な気分で
いても、ご飯を食べているうちに忘れていっ
て、満腹になったらケロッとしてしまう明る
い性格の人もいるのかもしれないが、大多数
の人はそうではないだろう。【4】つまり「
おいしい」とか「まずい」というのは、食べ
物そのものより、自分の心の持ちようで変わ
るものなのかもしれない。 
 そういえば、こんなこともあった。前、沖
縄へ旅行をして、海辺でゴーヤチャンプルー
を食べたときのことだ。【5】新鮮な感じが
して、とてもおいしかった。それをもう一度
味わいたくて、帰ってから母にゴーヤチャン
プルーを作ってほしいと頼んだ。 
 しかし、いざそれが我が家の食卓に乗り、
一口食べてみたら、なぜかそれほどおいしく
は感じられなかった。【6】いや、はっきり
言うと変な味だと思ってしまった。
 せっかく作ってくれた母に悪かったので、
全部食べたが、「こんな味だったっけ?」と
首をかしげたくなったものだ。 
 【7】今思うと、沖縄の海で思いきり泳ぎ
、お腹を空かせて、美しい海を眺めながら食
べた、という雰囲気が、おいしさを倍増させ
たのだろう。
 やはり、よい気分で食べるご飯はおいしい
。楽しい気持ちでいると、不思議とお腹も空
く。∵ 
 【8】この間の給食のとき、友達が面白い
話を連発して、大笑いをした。まるでお腹が
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よじれるようで、絶対に吹き出してしまうか
ら、牛乳を飲むことができなかったほどだ。
 
 ただし、そのとき食べたものの肝心の味が
どうだったかということは、実はあまり覚え
ていない。【9】というより、友達とのおし
ゃべりが面白すぎて、何を食べたかも思い出
せないのである。 
 「笑いながらごはん食べても、おいしいと
は限らない」。ふと、そんな言葉が頭に浮か
んだ。でも、笑いながらごはんを食べれば、
お腹も心も満腹になる。これからも、そんな
楽しい食事をしていきたい。【0】

(言葉の森長文作成委員会 ι)