長文集  11月3週  ★科学的態度(感)  nu-11-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2012/06/15 08:09:23
 【1】科学的態度などというと、たいへん
むずかしいことのように思いがちである。し
かし、日常の生活におけるちょっとした心が
け次第でこの態度を身につけることができる
ものである。では、どのようなことを科学的
態度というのであろうか。
 【2】まず、ものをよく見るということで
ある。よく見ることができれば、何かふに落
ちないことがあったとき「はてな。」「変だ
な。」と思うことができる。これが、科学的
態度への出発点なのである。
 【3】ところで、われわれは、いつでもも
のをよく見ているようであるが、実は案外よ
く見ていないのである。たとえば、タイはど
んな色をしているかとたずねると、たいてい
の人は赤いと言う。はたしてそうであろうか
。【4】絵にかいたえびす様の持つタイは、
確かに赤い。しかし、ほんとうのタイは、そ
れとは異なった色をしている。むらさき色に
近い色で、生きているときは、さらに緑がか
っている。【5】もし、それを見る機会がな
いとしても、さかな屋の店頭にあるタイなら
見ることができるだろう。タイは赤いという
習慣的な考えで赤いと思っているだけである

 自然界に実際にあるもの、実際に起こって
いる現象は、決して単純に判断できるもので
はない。【6】習慣や常識にとらわれていた
のでは正しくものを見ることはできない。だ
から、自分の目を見開いて、しっかりと自分
の目でたしかめる態度が必要である。
 【7】それでは、ものをよく見て、「はて
な。」と感じさえすれば、それでいいのであ
ろうか。問題は、「はてな。」と感じたと 
き、それだけで終わらせるかどうかという点
にある。そのとき、「どうしてだろう。」と
思い、それについて考えてみるようにしなけ
ればいけない。【8】その場合、自分の持っ
ている知識で説明がつかないときにはその疑
問とする点について、すぐ実験したり、調べ
たりしてみることである。
 ところが、実験などというと敬遠されがち
である。が、実験を生活に取り入れることは
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、興味深いことなのである。【9】たとえ 
ば、土をほり起こしているうちに、スコップ
がみょうに重くなったりする。そこで、草を
ひとつかみちぎって、こびりついている土を
こす∵り取ってみる。すると、軽くなる。
 そこで、土がこびりつかないようにしたら
仕事が楽だろうということに気づく。【0】
家に帰ってさびを取り、油を引いておく。翌
日からスコップは軽くなるにちがいない。そ
んな簡単な実験でいいのである。
 日常の生活では、これと似たようなことに
出合う場合が多いものである。そんなとき、
疑問をいだいたら、そのままにほうっておか
ないで、実験したり調べたりすることがたい
せつである。
 科学的態度とは、疑問を実験や調査によっ
て解決しようとする態度である。これは、科
学を研究する者にとって必要な心がけである
ばかりでなく、人間たちだれしもが身につけ
ておく必要のある生活態度であるといえよう