【1】科学的態度などというと、たいへん むずかしいことのように思いがちである。し かし、日常の生活におけるちょっとした心が け次第でこの態度を身につけることができる ものである。では、どのようなことを科学的 態度というのであろうか。 【2】まず、ものをよく見るということで ある。よく見ることができれば、何かふに落 ちないことがあったとき「はてな。」「変だ な。」と思うことができる。これが、科学的 態度への出発点なのである。 【3】ところで、われわれは、いつでもも のをよく見ているようであるが、実は案外よ く見ていないのである。たとえば、タイはど んな色をしているかとたずねると、たいてい の人は赤いと言う。はたしてそうであろうか 。【4】絵にかいたえびす様の持つタイは、 確かに赤い。しかし、ほんとうのタイは、そ れとは異なった色をしている。むらさき色に 近い色で、生きているときは、さらに緑がか っている。【5】もし、それを見る機会がな いとしても、さかな屋の店頭にあるタイなら 見ることができるだろう。タイは赤いという 習慣的な考えで赤いと思っているだけである 。 自然界に実際にあるもの、実際に起こって いる現象は、決して単純に判断できるもので はない。【6】習慣や常識にとらわれていた のでは正しくものを見ることはできない。だ から、自分の目を見開いて、しっかりと自分 の目でたしかめる態度が必要である。 【7】それでは、ものをよく見て、「はて な。」と感じさえすれば、それでいいのであ ろうか。問題は、「はてな。」と感じたと き、それだけで終わらせるかどうかという点 にある。そのとき、「どうしてだろう。」と 思い、それについて考えてみるようにしなけ ればいけない。【8】その場合、自分の持っ ている知識で説明がつかないときにはその疑 問とする点について、すぐ実験したり、調べ たりしてみることである。 ところが、実験などというと敬遠されがち である。が、実験を生活に取り入れることは |
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、興味深いことなのである。【9】たとえ ば、土をほり起こしているうちに、スコップ がみょうに重くなったりする。そこで、草を ひとつかみちぎって、こびりついている土を こす∵り取ってみる。すると、軽くなる。 そこで、土がこびりつかないようにしたら 仕事が楽だろうということに気づく。【0】 家に帰ってさびを取り、油を引いておく。翌 日からスコップは軽くなるにちがいない。そ んな簡単な実験でいいのである。 日常の生活では、これと似たようなことに 出合う場合が多いものである。そんなとき、 疑問をいだいたら、そのままにほうっておか ないで、実験したり調べたりすることがたい せつである。 科学的態度とは、疑問を実験や調査によっ て解決しようとする態度である。これは、科 学を研究する者にとって必要な心がけである ばかりでなく、人間たちだれしもが身につけ ておく必要のある生活態度であるといえよう 。 |