長文集  12月1週  ついにできたブリッジ  nu-12-1
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/09/11 09:38:42
 【1】天井と床がひっくり返って、天井が
近づいてきた。一秒、二秒、三秒……、自分
で数を数える。八秒。体の力が抜けた。また
ひっくり返って、今度は床が近づいた。同時
に僕は思った。
「これで大丈夫だ。目標を達成したぞ!」
 【2】夏休みの課題の中で、僕の体にいち
ばん重くのしかかっていたのは「八木節に向
けての体力作り」だった。
 八木節とは、団体でやるダンスの演目だ。
その中に、両手と両足を使って仰向けのまま
体を持ち上げ、ブリッジをする場面があっ 
た。
 【3】僕は太っていて体が重いので、これ
は大変な作業だった。なにしろ、これまでや
ってきたブリッジでは一度も肩が上がらなか
った。そのほかは確実にやりきる自信があっ
たが、ブリッジは苦手だった。【4】しかも
、八木節は、運動会と三ツ沢(みつざわ)競
技場での発表会と、二回も踊らなくてはなら
ない。不安は積もっていくばかりだった。
 そんなわけで、僕は母にコツを教えてもら
おうと思った。母は趣味でダンスをやってい
たので、体の動かし方というのをよく知って
いた。
 【5】母によると、重要なのは手のつき方
だそうで、僕は正しいつき方をしていなかっ
たらしい。だが、母に教わった手のつき方を
しても、頭はまだ上がらない。なんとか頭を
ついたままのブリッジだけはできるようにな
ったので、運動会では仕方なく頭つきでやっ
た。【6】成功したが、満足はできなかった

 僕は、三ツ沢(みつざわ)競技場の発表会
までに、なんとかブリッジを完璧にしたいと
思った。頭つきだと、どうしても肩が下がり
気味で、「へ」の字型のブリッジになってし
まう。僕は、もっときれいにやりたかった。

 【7】練習あるのみと思った僕は、体育の
ときも頭をつかないブリッジにチャレンジし
てみたが、やはり途中で倒れてしまうのだっ
た。
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 僕は、学校から帰るときも、歩きながらど
うしたらいいか考え た。
「できないわけはない。今度は手と足に全力
を込めてやってみよ う。」
 【8】こう前向きに考えたのがよかった。
 家に帰ってカバンを置くと、さっそく考え
たとおりにやってみ た。仰向けに寝て、手
を正しくつく。一度深呼吸をして、手足にぐ
っと力を入れ、一気に伸ばした。肩がまった
く床から離れようとしてくれない。【9】手
に満身の力を込めた。それでも肩は上がらな
かった。
「できないわけない。」
 自分を励ましながら、必死に体を持ち上げ
た。だんだん天井が近づいてくる。そして、
ついに肩が床から離れた感じがわかった。目
標を達成できたのだ。
 【0】起き上がったとき、まるで世界その
ものが自分の体とともに一回転して、がらり
と変わったような気がした。
 人間は、目標を達成することで大きな自信
をつけることができ る。だが、そのために
は、その目標をどうしても達成しようとする
意志の力が必要だ。「意志のあるところに道
がある」。僕は、英語の先生に教わったこと
わざを思い出した。

(言葉の森長文作成委員会 ι)