長文集  1月2週  ★(感)こどもたち  re2-01-2
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2012/06/15 08:09:23
こどもたち

【1】こどもたちの視るものはいつも断片
それだけではなんの意味もなさない断片
【2】たとえ視られても
おとなたちは安心している
なんにもわかりはしないさ あれだけじゃ

【3】しかし
それら一つ一つとの出会いは
すばらしく新鮮なので
こどもたちは永く記憶にとどめている
【4】よろこびであったもの 驚いたもの
神秘なもの 醜いものなどを

【5】青春が嵐のようにどっと襲ってくると
こどもたちはなぎ倒されながら
【6】ふいにすべての記憶を紡ぎはじめる
かれらはかれらのゴブラン織りをはじめる

【7】その時に
父や母 教師や祖国などが
海蛇や毒草 こわれた甕(かめ) ゆがんだ
顔の
イメージで ちいさくかたどられるとしたら
それはやはり哀しいことではないのか

【8】おとなたちにとって
ゆめゆめ油断のならないのは
なによりもまず まわりを走るこどもたち
【9】今はお菓子ばかりをねらいにかかって
いる
この栗鼠どもなのである【0】

(『茨木のり子詩集』より)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35