ルピナス2 の山 10 月 3 週 (5)
★自分の脳の「好み」を(感)   池新  
 【1】自分の脳の「好み」を知ってそれを上手に活用することが「生き方探し」の勉強法の究極のコツになります。ところが、「生き方探し」に迷っている人や失敗する人は、たいてい「自分の脳」の「好み」ではなく「他人の脳」の「好み」を自分の脳の好みだと錯覚しています。【2】だから、勘違いしないことが第一のコツなのです。どんな仕事であれ生き生きと充実感をもって打ち込んでいる人は、必ず他人の脳ではなく自分の脳の好むことを選択しています。
 【3】しかし、自分の脳の「好み」に合わせているだけでは不十分です。「好み」は「偏り」でもあるからです。だから、「好みに合わせてはまる」ことと併せて、あえて「好み」に合わないことや「食わず嫌い」だったことにチャレンジしてみることです。【4】これが第二のコツです。異なる視点からの情報が思考の幅を広げ、発想をより豊かにしてくれます。
 おもしろいことに、それまで「食わず嫌い」だったことのほうがじつは自分の脳の「好み」にぴったりだった、ということも珍しくありません。【5】私は英文学の勉強をしていた人が心理学で成功したケースを知っています。
 これこそ自分の脳の「好み」だと考えてきたものより「食わず嫌い」だったものがじつは本当の好みだった、ということがあるくらい、自分の脳の「好み」を探すのはむずかしいものです。【6】だから、ときに自分の脳の「好み」を疑ってみる必要もあるわけです。そのために、あえて「好み」に合わないことや「食わず嫌い」にチャレンジしてみることが第二のコツになるのです。
 【7】それにいくら好みに合ったところで、人間の脳は「飽き」という問題も抱えています。死ぬまではまり続けるという幸せな人もいますが、そうでない人もたくさんいるのは、いくら好みでも「飽き」があるからです。【8】この「飽き」の問題に対処するためにも、今の自分の脳の「好み」とは別の「好み」を開拓する努力を怠らないほうがよいでしょう。
 そして「生き方探し」の第三のコツは、人と人との対面するコミ∵ュニケーションを欠かさないということです。【9】人の脳はそれぞれ異なった偏りをもっています。「好みの違い」もその一つです。そして人は互いの脳の偏り方が違うからこそ、互いに理解しあうことが難しいのです。だからこそ、コミュニケーションが大切なのです。【0】他者や異文化の視点が加わることで、自分の考え方の偏りが自覚され相対化されるからです。
 それゆえ、「他者との語り合いの場」に参加することが「生き方探し」の勉強法の第三のコツになります。学校でもサークルでも生涯学習機関でも異業種間の勉強会でもかまいません。そのような場で語り合うことでしか得られないものがあります。それはあなたの「生き方探し」の強い力となってくれるでしょう。人と人とのコミュニケーションはまさに生きた勉強そのものなのです。

(中山 治「生き方探しの勉強法」より)