長文 5.3週
1. 牛のお通りで電車がとまる――牛をうやまうインドの人――

2. 【1】町のまん中で、なにかじけんがあったのでしょうか。いままで走っていた電車がとまってしまいました。自動車じどうしゃも、うごきません。
3. 人ごみをのぞいてみますと、牛が二頭、一頭は電車のせんろに、一頭はそれとならんで、のんきな顔つきで、ねそべっています。
4.【2】「こまったなあ。はやくどいてもらわなくては、通ることができない。」
5.と、電車の車しょうも、自動車じどうしゃのうんてん手も、こまった顔です。
6. 【3】つなをつけてひっぱるとか、ぼうでおいはらったらよいとおもいますが、だれも、そんなことをしようとおもわないようです。
7. 【4】そのうちに、牛はゆっくりとおきあがって、町の大通りを、さんぽでもするように、のそのそとあるいていきました。電車も、自動車じどうしゃも、なにごともなかったようにうごきだしました。
8. 【5】これは、日本のはなしではありません。インドのカルカッタという町での、できごとなのです。
9. インドでは、こういったことはたびたびみられます。【6】インドの人たちは牛をたいへんだいじにします。だいじにするというよりも、牛を、神さまかみ  が、かりにすがたをあらわしたものだとおもってうやまうのです。
10. 【7】ですから、カルカッタの町にはなん百頭という牛が野ばなしで、まい日、のそのそとあるきまわっています。
11. 町の人たちは、まい朝、その牛に、たべものをささげます。
12. 【8】ときには、牛が店さきのたべものなどを、しっけいすることもありますが、それでも、おこって牛をおいはらうようなことは、けっしてしません。牛が、通り道にねころんで、通りをふさいだりしていても、牛がうごきだすまで、のんびりと、まっているのです。
13. 【9】インドでは、たいていの人がヒンズー教というおしえをしんじていますが、ヒンズー教のしんじゃたちは、牛ほどやくにたつ動物どうぶつはないとおもっているのです。【0】

14.(「世界せかいふしぎめぐり三年生」より抜粋ばっすい