長文集  5月4週  ○ミルクの不思議(感)  sa-05-4
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2015/03/15 14:08:18
【長文が二つある場合、読解問題用の長文は
一番目の長文です。】
 シベリアやアラスカといった、寒さの厳し
い地方で暮らす人々 は、古くから、人や物
を運ぶために、犬ぞりを使ってきました。シ
ベリアン・ハスキーやサモエド、アラスカン
・マラミュートといった種類の、寒さに強く
、力持ちの犬たちにそりを引かせるのです。
これらの犬たちは、ふさふさした毛と厚い脂
肪を持っているため、北極の氷の上で眠って
も平気です。また、長い距離を走っても耐え
られる、すぐれた体力の持ち主です。
 なかでもハスキー犬は、探検家ピアリーや
アムンゼンによる北極や南極探検に使われ有
名になりました。また、ドッグレースや犬ぞ
りレースで、いつも優秀な成績を収めていま
した。
 あるとき、アラスカのノームという町に、
ジフテリアという恐ろしい病気がはやりまし
た。現在では多くの国で予防接種が行われて
いるので、ジフテリアはほとんど流行するこ
とがありません。しかし、当時はまだ、おお
ぜいの人が死ぬこともある怖い病気でした。
ジフテリアの症状を抑えるには、ワクチンと
いう薬が必要ですが、この時ノームの町では
、ワクチンが底をついてしまいました。あま
りに患者が多かったからです。このままでは
、人々がどんどん死んでしまいます。
 ノームの町からアラスカ州の政府があるア
ンカレッジに、助けを求める連絡が入りまし
た。すぐにでも、ワクチンを送らなければな
りません。しかし、その時はとても天気が悪
く、猛吹雪が続き、飛行機を飛ばすことがで
きません。自動車でさえ走れないようなひど
い嵐です。ワクチンをラクチンに運べるよう
な状況ではありませんでした。
 「そうだ。犬ぞりで運ぼう。」政府は、そ
う決断しました。そして、すぐさま村々に連
絡が行きました。ただちに二十の犬ぞりチー
ムが、ワクチンを届けるために準備をしまし
た。
 外は、マイナス五十度にもなる厳しい寒さ
と、荒れ狂う吹雪で∵す。この中を、二十の
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犬ぞりチームは五日間かけて走り通し、ワク
チンは無事にノームに届けられたのです。こ
のおかげで、数百人の命が救われました。
 このときの働きをたたえて、ハスキー犬の
銅像が、ニューヨークのセントラル・パーク
に立てられています。また、この出来事を記
念して、毎年、世界でいちばん難しくいちば
ん長い犬ぞりレースがアラスカで行われるよ
うになりました。このレースは、アンカレッ
ジからノームまでを人間一人と犬たち十数匹
で走るレースです。ふつう、ゴールするのに
三週間くらいかかるそうです。
 犬たちのがんばりも相当なものですが、人
間の根性もたいしたものです。こんなに大変
なレースの後では、犬たちに号令をかけ続け
た人間の声もしわがれて、きっと「ハスキー
・ボイス」になってしまうことでしょう。
 寒い地方で使われる犬ぞりのほかに、日本
にもさまざまなそりがあります。有名なとこ
ろでは、エビぞり、ひげそり、のっそり、ご
っそり、もっそり、こっそり、ひっそり、げ
っそり、などです。

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(
τ)∵
 【1】哺乳類の赤ちゃんは、母親からミル
クを与えられて育ちます。動物のミルクの成
分は、みな同じではなく、それぞれに特徴が
あります。【2】たとえば、オランウータン
やチンパンジーなど は、母親がいつも子供
のそばにいてミルクを与えることができる生
活をしているので、ミルクは薄く、たんぱく
質と脂肪が少なくなっています。
 【3】ところが、ライオンなどの狩りに出
かける動物は、母親が何時間も留守にするた
め、その間は子供にミルクを与えることがで
きません。長時間子供のお腹(なか)を満た
しておく必要があるので、ミルクは濃く、た
んぱく質と脂肪をたくさん含んでいます。
 【4】また、寒い地方や水中にすむ動物は
、体温をうばわれないように、皮膚の下にた
くさんの脂肪をたくわえています。この仲間
であるアザラシやアシカのミルクはとても濃
く、脂肪がたくさん含まれています。
 【5】クジラやイルカの赤ちゃんは、水中
でミルクを飲みます が、まだ赤ちゃんなの
で長時間もぐっていることができません。そ
こで、短い時間でもたくさんの栄養を取れる
ように、やはり濃いミルクになっています。
 【6】人間のお腹(なか)の中(なか)に
は、たくさんの細菌がすんでいて、その中に
は役に立つものと病気のもとになるものがあ
ります。赤ちゃんのお腹(なか)の中(なか
)にも、生まれて間もなく、さまざまな細菌
がすみつきはじめます。【7】母乳には、赤
ちゃんにとって役に立つ微生物が増えるため
の成分や、病気のもとになる細菌を増やさな
いようにする成分が入っていて、赤ちゃんの
健康を保つ大きな役割りを果たしています。
 【8】赤ちゃんが生まれて間もないころの
母乳は、初乳(しょにゅう)と呼ばれていま
す。人間の体には、外から入ってきた病気の
もとを撃退するための免疫というシステムが
ありますが、生まれたばかりの赤ちゃんは、
まだ免疫を十分(じゅうぶん)に持っていま
せん。【9】初乳(しょにゅう)には、お母
さんが∵持っている免疫物質がふくまれてい
て、それが赤ちゃんの体の中で吸収されて、
いろいろな病気から赤ちゃんを守っているの
です。

 おっぱいには、このようにいろいろなもの
がいっぱい入っています。
 【0】しかし、赤ちゃんが大きくなり、自
分でご飯が食べられるようになると、やがて
赤ちゃんは自分の力で生きていくようになり
ます。
 そこで、「おっぱいさん、グッパーイ」と
なるわけです。

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(
κ)