長文集  4月2週  ○あし(感)  sa2-04-2
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2011/01/06 15:43:24
あし

 【1】二ひきの馬が、まどのところでぐう
るぐうるとひるねをしていました。
 すると、すずしい風がでてきたので、一ぴ
きがくしゃめをしてめをさましました。
 ところが、あとあしがいっぽんしびれてい
たので、よろよろとよろけてしまいました。
【2】「おやおや。」
 そのあしに力をいれようとしても、さっぱ
りはいりません。
 そこでともだちの馬をゆりおこしました。
「たいへんだ、あとあしを一本、だれかにぬ
すまれてしまった。」
「だって、ちゃんとついてるじゃないか。」
【3】「いやこれはちがう。だれかのあしだ
。」
「どうして。」
「ぼくの思うままに歩かないもの。ちょっと
このあしをけとばしてくれ。」
 そこで、ともだちの馬は、ひづめでそのあ
しをぽォんとけとばしました。
【4】「やっぱりこれは、ぼくのじゃない、
いたくないもの。ぼくのあしならいたいはず
だ。よし、はやく、ぬすまれたあしをみつけ
てこよう。」
 そこで、その馬はよろよろと歩いてゆきま
した。
【5】「やァ、椅子がある。椅子がぼくのあ
しをぬすんだのかもしれない。よし、けとば
してやろう、ぼくのあしなら、いたいはず 
だ。」
 馬はかたあしで、椅子のあしをけとばしま
した。
 椅子は、いたいとも、なんともいわないで
、こわれてしまいました。
 【6】馬は、テーブルのあしや、ベッドの
あしを、ぽんぽんけってまわりました。けれ
ど、どれもいたいといわなくて、こわれてし
まいました。
 いくらさがしてもぬすまれたあしはありま
せん。
「ひょっとしたら、あいつがとったのかもし
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れない。」
と馬は思いました。
 【7】そこで、馬は、ともだちの馬のとこ
ろへかえってきまし た。そして、すきをみ
て、ともだちのあとあしをぽォんとけとばし
ました。∵
 するとともだちは、
「いたいッ。」
とさけんでとびあがりました。
【8】「そォらみろ、それがぼくのあしだ。
君だろう、ぬすんだのは。」
「このとんまめが。」
 ともだちの馬は力いっぱいけかえしました

 【9】しびれがもうなおっていたので、そ
の馬も、
「いたいッ。」
と、とびあがりました。
 そしてやっとのことで、じぶんのあしはぬ
すまれたのではなく、しびれていたのだとわ
かりました。【0】

「新美南吉童話作品集」