長文集  4月3週  ★狐のつかい(感)  sa2-04-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2012/06/15 08:09:23
狐のつかい

 【1】山のなかに、猿や鹿や狼や狐などが
、いっしょにすんでおりました。
 みんなはひとつのあんどんをもっていまし
た。紙ではった四角な小さいあんどんであり
ました。
 夜がくると、みんなはこのあんどんに灯を
ともしたのでありました。
 【2】あるひの夕方、みんなはあんどんの
油がもうなくなっていることに気がつきまし
た。
 そこでだれかが、村の油屋まで油を買いに
ゆかねばなりません。さてだれがいったもの
でしょう。
 【3】みんなは村にゆくことがすきではあ
りませんでした。村にはみんなのきらいな猟
師と犬がいたからであります。
「それではわたしがいきましょう」
とそのときいったものがありました。狐です
【4】。狐は人間の子どもにばけることがで
きたからでありました。
 そこで、狐のつかいときまりました。やれ
やれとんだことになりました。
 【5】さて狐は、うまく人間の子どもにば
けて、しりきれぞうりを、ひたひたとひきず
りながら、村へゆきました。そして、しゅび
よく油を一合かいました。
 かえりに狐が、月夜のなたねばたけのなか
を歩いていますと、たいへんよいにおいがし
ます。【6】気がついてみれば、それは買っ
てきた油のにおいでありました。
「すこしぐらいは、よいだろう。」
といって、狐はぺろりと油をなめました。こ
れはまたなんというおいしいものでしょう。
 狐はしばらくすると、またがまんができな
くなりました。
【7】「すこしぐらいはよいだろう。わたし
の舌は大きくない。」
といって、またぺろりとなめました。
 しばらくしてまたぺろり。∵
 狐の舌は小さいので、ぺろりとなめてもわ
ずかなことです。【8】しかし、ぺろりぺろ
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
りがなんどもかさなれば、一合の油もなくな
ってしまいます。
 こうして、山につくまでに、狐は油をすっ
かりなめてしまい、もってかえったのは、か
らのとくりだけでした。
 【9】待っていた鹿や猿や狼は、からのと
くりをみてためいきをつきました。これでは
、こんやはあんどんがともりません。みんな
は、がっかりして思いました、
「さてさて。狐をつかいにやるのじゃなかっ
た。」
と。【0】

「新美南吉童話作品集」