長文集  1月3週  ★(感)ちゃんばらごっこのけが  se2-01-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2012/06/15 08:09:23
 【1】はたけは、麦をかりとったあとで、
すっぺりとしていました。わたしは、いっし
ょうけんめいはしりました。みなもおってき
ます。
 ところが、そのうち、わたしは、足のうら
があつくてたまらなくなりました。【2】そ
のころのわたしたちは、みんなはだしでした
から、夏の日ざしにやけた土は、ちょうどす
なはまとおなじよう に、あつかったのです

 それで、わたしは、はしりながら、草がす
こしかたまってはえているようなところをえ
らんで、ふむようにしました。
【3】(しめた、これならあつくないぞ。)
 そうおもいながら、五、六ぽもいったでし
ょうか。お神明さん は、すぐそこです。
 そのとき、
「あいたあっ!」
 右足のうらに、ひどいいたみをかんじて、
わたしはとびあがりました。きりでもズブリ
とさしとおしたようなかんじです。
 【4】一ぽ、二ほ、たたらをふむと、土の
上にころがりました。かずまくんやいくおく
んたちは、すぐにとんできました。
「どうした。」
「へびか。」
 わたしは、しりもちをついたまま、右足を
見ました。なにか、つきささっています。【
5】くぎです。赤くさびた、五寸くぎです。
ブッスリとはいりこんでいます。いたみが頭
のしんまでつきとおります。
「すぐにぬいてしまわなきゃなんねえど。」
 かずまくんは、そういうと、いきなりわた
しの足をかかえ、つきささっているふるくぎ
をつかむと、おもいきりつよく、グイとひき
ぬきました。
【6】「ああっ!」
 おもわずひめいをあげましたが、もうその
ときには、くぎはとれていました。
「三センチぐれえも、へえってたな。」
 いくおくんが、まゆをひそめてわたしを見
ています。わたしは、りょう手でその足くび
をにぎりしめました。【7】ちがすこしでて
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きましたが、ぬいたあとはすぐふさがりそう
にも見えます。
「あるけるか。たってみろよ。」
 左足に力いれて、そっとたってみました。
いたみはたしかにかんじますが、つまさきを
ちょっとつけるようにすれば、あるけないこ
ともなさそうです。∵
【8】「かたなをつえにすればいい。」
 いわれたとおりやってみると、いかにもち
ゃんばらでやられたゆうしのような気になり
ました。
 ちゃんばらごっこは、それでちゅうし。み
んなでお神明さんのまえで、しばいごっこな
どをして夕方まであそび、家へもどるときに
は、もうそのけがのことは、ほとんどわすれ
ていました。
 【9】さて、これですんでいればなんとい
うこともなかったのですが、つぎの日になっ
て、この足が、いたみだしたのです。赤くは
れだした足のうらは、すこしずつ、いたみを
ましてきました。
 【0】しかられるかもわからないとおもっ
たわたしは、いつかいたみがひくことをねが
って、こらえていましたが、どうにもこうに
も、がまんしきれなくなりました。ズキンズ
キンと、ほねでもきられるようないたさです

 たぶん、その夕方だったでしょう。足をお
さえてころげているのを、兄かあねが見つけ
、母にしらせました。母は、いそいでやって
くると、赤くはれた足のうらを見るなり、さ
けびました。
「なにをしたんだえ、この足は。」
 わたしは、いたみになみだをながしながら
、けがをしたときのことをはなしました。と
たんに、母は、いきなりわたしのほおを、パ
シッとたたきました。
「なんで、すぐさまいわなんだがや!」

『いたずらわんぱくものがたり』「ちゃんば
らごっこのけが」(かつおきんや)より