長文集  2月2週  ○きんとんきんとんくりきんとん  se2-02-2
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2010/09/28 13:52:51
 【1】母まで、まるでわたしのことなどわ
すれたように、白いまえかけのひもをきゅっ
とむすぶと、もうながしばのほうにいってし
まいました。
 わたしはしかたなく、かつよねえちゃんを
、よこ目でひとにらみしてから、うらにわの
むこうのはなれにいきました。
 【2】はなれでは、太郎くん、みっちゃん
、としぼうたち、ちびすけばかり五、六人が
、ひとかたまりであそんでいました。
「あ、ゆう子ちゃんだ。」
と、みっちゃんがとびついてきました。みっ
ちゃんは、わたしより一さい年下のなかよし
です。【3】でもわたしは、ぶすっとつった
っていました。このままはなれでちびすけた
ちのあいてをするなんて、じつにつまらない
ことにおもえてきたからです。
「ねえ、あそぼうよ。」
 みっちゃんがわたしの手を、しきりにひっ
ぱります。【4】そのとき、いいことをおも
いつきました。家の中のたんけんをしてやろ
う、とおもったのです。
「みっちゃん、おいで。」
 わたしはみっちゃんをつれて、いそいでは
なれをとびだし、うらにわのしげみにかくれ
て、ざしきのようすをうかがいました。
【5】「なにするの。」
「しっ、だまって、たんけんよ。」
「たんけん?」
「うん、そうっと家の中にはいってなにかい
いものさがしだそう。かあちゃんたちに見つ
からないようにね。」
「見つかったらいけないの?」
「そうよ、見つかったら、たんけんにならな
いよ。」
「うん、おもしろそうだね、たんけんって。

 【6】みっちゃんはすぐにうなずきました
。みっちゃんは、いつもわたしのいうなりに
なるのです。
 ふたりはざしきのよこにまわり、ろうかの
すみっこから家の中にしのびこみました。そ
してまず、ふろばにとびこみました。
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 【7】ざしきのほうからきこえてくる、お
じいさんたちのはなし声やわらい声。だいど
ころの水の音、おさらのふれあう音や足音。
いろんな音に耳をすましながら、ふたりは、
かがみのまえでくびをすくめてくすりとわら
いました。
【8】「あ、かあちゃんの声だ。」
みっちゃんが、とびだそうとしました。
「だめ、みっちゃん。見つかったら、また、
はなれにつれもどされるよ。」∵
 それからふたりは、かべにそって、そうっ
と、そうっと、せ中をまるめてあるきました

 【9】だいどころのそばの、小べやのまえ
まできたときです。
「あれ、なに?」
と、みっちゃんがゆびさしました。
 せまいへやじゅうには、おさらをだしたあ
との木ばこなどが、ほうりだしてありました
。【0】そのまん中にテーブルが一つ、そし
てテーブルの上に、なんだか大そうおいしそ
うなものが、どんぶりに山もりにおいてある
のです。
 だれもいません。ふたりはテーブルにかけ
よりました。
 どんぶり山もりのおいしそうなもの、それ
は金いろにつやつやともりあげた、きんとん
でした。見ているだけで、ツバがでてきそう
です。
 みっちゃんがぶすりとゆびをつっこんで、
ひとなめしました。
「わっ、おいしーい。」
 わたしも、やわらかい金いろの中に、おも
いっきり人さしゆびをつっこんで、きんとん
をすくいました。
 あまくてあまくて、とろりと口いっぱいに
とけそうです。すくってはなめているうちに
、気がとおくなりそうな、おいしいきんとん
です。

『いたずらわんぱくものがたり』「きんとん
きんとんくりきんと ん」(山口勇子)より