1.
世界中を
簡単に
旅することができなかった
昔の人々にとって、ウミガメが毎年
決まった
季節になると
海岸にやってきて
卵を
産んでいく
様子は、
神秘的だったことでしょう。そんなウミガメから、
竜宮城という
夢のような話が生まれたのかもしれません。
2. では、日本にやってくるウミガメには、どんな
種類があるのでしょうか。日本
列島は
四季がはっきりしているので、
季節によって
気温や
海水温が大きく
変わってきます。その中で、日本に
卵を
産みにくるのは、アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイなどのカメです。
関東地方より南の
海岸で
卵を
産むアカウミガメは、春になると日本近海に
姿をあらわします。アオウミガメは、
屋久島より南で
卵を
産み、タイマイは
沖縄本島より南で
卵を
産みます。
3.
産卵場所となる
海岸の
沖には、オスがメスより一
ヶ月も前に来て
待っています。やがてメスがやってくる
時期になると、オスたちはメスのあとをついてまわるとともに、オスどうしで
激しく争い、メスを
奪い合います。かんだり、ぶつかったり、オールのような足ではたいたりと、とても
迫力があり、
水族館でゆったり
泳いでいるときの
姿からは
想像もつかないほどです。その後、オスは
産卵場所のまわりの海から
姿を
消します。メスは近くの
砂浜に
上陸して
産卵します。
4. お
風呂やプールに入ると、体が
軽く感じられます。それは、水の中につかっているものには
浮力が
働くからです。海中のウミガメは、
浮力のおかげで
重さが
陸上にいるときよりもずっと
軽くなります。しかし、
浮力の
働かない
陸上では
自由に体を
動かすことができません。海から上がって
卵を
産むときには、
外敵から自分や
卵を
守ることもできなければ、すばやく
逃げることもできません。そのため、
産卵をひかえたメスは、夜になってから
用心深く砂浜に
上陸し、
安全を
確かめてから
産卵にとりかかるのです。∵
5. アカウミガメは、左右の後ろ足を
交互にシャベルのように
使って、大きな
穴を
掘り、一回に百
個ほどの
卵を
産みます。一頭のメスは、夏の
産卵期の間に多いときで六回くらい
卵を
産みます。
6. では、ウミガメは
危険をおかしてまで、どうして
陸に
卵を
産むのでしょう。ウミガメは、
陸上で生活できるように
進化してきた
爬虫類の
仲間です。
爬虫類は
乾いた
場所でも体の水分が外へ出ていかないように、
丈夫なウロコのような
皮膚で体をおおっています。
卵も、水中に
産む魚類や
両生類のものと
違い、
鳥類の
卵のように
殻に
包まれています。ウミガメの
卵は、
殻を通して
息をしており、水中だと
息ができずに
死んでしまうのです。このため、ウミガメは一生の大
部分を海で
暮らすようになった今でも、
卵だけは
陸に
産みにくるのです。
7. ウミガメのひとりごと、「わたしも、本当は、海でウミたいわあ」。
8.
言葉の森
長文作成委員会(Κ)