長文 7.2週
1. 世界中せかいじゅう簡単かんたんたびすることができなかったむかしの人々にとって、ウミガメが毎年決まっき  季節きせつになると海岸かいがんにやってきてたまご産んう でいく様子ようすは、神秘しんぴてきだったことでしょう。そんなウミガメから、竜宮城りゅうぐうじょうというゆめのような話が生まれたのかもしれません。
2. では、日本にやってくるウミガメには、どんな種類しゅるいがあるのでしょうか。日本列島れっとう四季しきがはっきりしているので、季節きせつによって気温きおん海水温かいすいおんが大きく変わっか  てきます。その中で、日本にたまご産みう にくるのは、アカウミガメ、アオウミガメ、タイマイなどのカメです。関東かんとう地方より南の海岸かいがんたまご産むう アカウミガメは、春になると日本近海に姿すがたをあらわします。アオウミガメは、屋久島やくしまより南でたまご産みう 、タイマイは沖縄おきなわ本島ほんとうより南でたまご産みう ます。
3. 産卵さんらん場所ばしょとなる海岸かいがんおきには、オスがメスより一ヶ月かげつも前に来て待っま ています。やがてメスがやってくる時期じきになると、オスたちはメスのあとをついてまわるとともに、オスどうしで激しくはげ  争いあらそ 、メスを奪い合いうば あ ます。かんだり、ぶつかったり、オールのような足ではたいたりと、とても迫力はくりょくがあり、水族館すいぞくかんでゆったり泳いおよ でいるときの姿すがたからは想像そうぞうもつかないほどです。その後、オスは産卵さんらん場所ばしょのまわりの海から姿すがた消しけ ます。メスは近くの砂浜すなはま上陸じょうりくして産卵さんらんします。
4. お風呂ふろやプールに入ると、体が軽くかる 感じかん られます。それは、水の中につかっているものには浮力ふりょく働くはたら からです。海中のウミガメは、浮力ふりょくのおかげでおもさが陸上りくじょうにいるときよりもずっと軽くかる なります。しかし、浮力ふりょく働かはたら ない陸上りくじょうでは自由じゆうに体を動かすうご  ことができません。海から上がってたまご産むう ときには、外敵がいてきから自分やたまご守るまも こともできなければ、すばやく逃げるに  こともできません。そのため、産卵さんらんをひかえたメスは、夜になってから用心深くようじんぶか 砂浜すなはま上陸じょうりくし、安全あんぜん確かめたし  てから産卵さんらんにとりかかるのです。∵
5. アカウミガメは、左右の後ろ足を交互こうごにシャベルのように使っつか て、大きなあな掘りほ 、一回に百ほどのたまご産みう ます。一頭のメスは、夏の産卵さんらんの間に多いときで六回くらいたまご産みう ます。
6. では、ウミガメは危険きけんをおかしてまで、どうしてりくたまご産むう のでしょう。ウミガメは、陸上りくじょうで生活できるように進化しんかしてきた爬虫類はちゅうるい仲間なかまです。爬虫類はちゅうるい乾いかわ 場所ばしょでも体の水分が外へ出ていかないように、丈夫じょうぶなウロコのような皮膚ひふで体をおおっています。たまごも、水中に産むう 魚類ぎょるい両生類りょうせいるいのものと違いちが 鳥類ちょうるいたまごのようにから包まつつ れています。ウミガメのたまごは、からを通していきをしており、水中だといきができずに死んし でしまうのです。このため、ウミガメは一生の大部分ぶぶんを海で暮らすく  ようになった今でも、たまごだけはりく産みう にくるのです。
7. ウミガメのひとりごと、「わたしも、本当は、海でウミたいわあ」。

8. 言葉ことばの森長文ちょうぶん作成さくせい委員いいん会(Κ)