長文集  8月4週  ○豊かな紙の国  si-08-4
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/06/09 09:39:18
 文字は、初め石などに刻まれていました。
しかし、それでは時間もかかるし、重すぎて
持ち運ぶこともできません。人間が、カイコ
のまゆから絹の布を作ったり、植物から繊維
をとり出して布を作ったりすることができる
ようになると、その布を作る技術を利用し 
て、紙を発明することができるようになりま
した。紙は、安い上 に、軽くて、しかも薄
いので、何枚も重ねて使うことができまし 
た。この紙の発明で、文字が人間の社会に広
がるようになったのです。
 日本にも、一六〇〇年以上前に、中国から
紙を作る方法が伝わってきました。日本には
紙にするのにとてもよい植物があり、日本人
は工夫が得意だったので、あっというまに、
厚い紙、薄い紙、硬い紙、軟らかい紙、白い
紙、色のついた紙、そして、金や銀をちらし
た紙、よい香りがする紙など、いろいろな紙
が作り出されました。
 その時代に書かれた本には、「いろいろな
紙をもらうと、この紙にあわせて、どんなふ
うに工夫して字や絵をかこうかと考えてとて
も楽しい」とか、「いやなことがあっても、
真っ白で上等な紙のたばをもらうと、気持ち
もはれて、ここに何を書こうかとうれしくな
ってくる」などという話が載っています。今
でも、きれいな折り紙や包み紙、真っ白なノ
ートなどをもらったときに、同じような気持
ちが感じられるのではないでしょうか。
 日本では、古い紙をもう一度すきかえして
新しい紙にする技術も発明されました。その
リサイクルの紙は真っ白でなくしっかりもし
ていませんでしたが、普通の人も買うことが
できる安い本になりました。
 江戸時代になると、紙の本はたくさんの人
が持つことができるようになりました。それ
ばかりか、子どものための、紙細工のおもち
ゃまでたくさん作られるようになりました。
これを、おもちゃ絵と∵いいます。そこには
豆絵本のような、本のかわりになるものや、
はさみで切ってくみたてて遊ぶ紙おもちゃな
どさまざまな種類のおもちゃがありました。
きせかえ人形や、おしばいごっこの立ち絵、
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紙ずもうやめんこ、そして組み立て絵という
ものができたのもこのころです。ほかにもす
ごろくやかるたなど、今の時代にも伝わるお
もちゃがこの時代に発達しました。。
 江戸時代の子どもたちも、今の子どもたち
が、ゲームのカードをためたりマンガを買い
そろえたりするのと同じことをやっていたの
です。
 破れやすく、火には燃えてしまう紙と知っ
てはいても、それでも紙でできたものには、
集めて愛さずにはいられない魅力があるよう
です。

「紙君って、えらいんだね。今度から紙様っ
て呼ぼうか。」
「いやあ、もっと気楽に読んでくれた方がい
いよ。」
「じゃあ。ヘイ、カミーン。」

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(
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