1. みなさんは空の絵をかくとき、何色でかきますか。ふつうは空色、つまり
薄い青色にするのではないでしょうか。しかし、もしかすると、ある人は、
昨日の
夕焼けの空を思い出してきれいなオレンジ色にするかもしれません。
2.
確かに、空の色は
時刻によっても、天気によっても
変わります。空だけではありません。木でもベンチでも人の顔でも、その時々でいろいろな色合いに
変わります。では、その時々の色を
決めるのはなんでしょうか。
3. それは光です。
物は、光との
関係によってさまざまな色合いに
変化します。
特に、外の
景色は
太陽の光をじかに
受けているので、一日のうちでもさまざまに
印象を
変えます。この光というものを大切に考えて、
自然の
姿をそのまま絵にしようと考えたのが、
印象派と
呼ばれる
芸術家たちでした。
4.
印象派とは、十九
世紀の後半にフランスで
起こった画家を中心とするグループです。それまでは、時間をかけてかきこんだ
重々しい作品がよいとされてきました。そのため、
一瞬の
輝きをとらえてすばやく
仕上げる印象派の絵は、
最初単なるスケッチにすぎないと見られていました。
印象派の
最初の
印象は、あまりよくなかったのです。
5. しかし、
印象派の人たちは、
実はしっかりした科学
的な考え方にもとづいて
制作をしていました。そのひとつが、
シュヴルールという人の色の考え方です。
彼は本の中で、となり合う色がおたがいに
影響しあって、いろいろな見え方になることを
説明しました。そしてとなり合う色どうしが
違えば
違うほど、より大きな
効果があるとしました。
6.
例えば、赤と
緑、黄と
紫などは、
最も違う色合いで、このような色の組み合わせを
補色の
関係と
呼びます。
補色を
並べてみると、目がちかちかするような
効果を生みます。青っぽい色は
奥に∵
引っ込み、赤っぽい色は前に
飛び出してくるようにも見えます。
7. その
印象派の画家たちの中で中心となったのが、クロード・モネです。モネは、
移ろいやすい光や
自然の
鮮やかな色を、だれよりも
深く追い求めました。
8. それまでの絵は、
絵の具を
混ぜることによってさまざまな色を作り出していました。
絵の具は
混ぜ合わせれば
混ぜ合わせるほど、明るさがなくなっていきます。
絵の具の
筆を
洗っていると、水がどんどん
暗い色になっていくことを知っている人も多いでしょう。
印象派以前の絵は、
暗い部分に
影をつけることによってものの
奥行きを出していたので、絵が
更に暗く重い感じになっていました。
9. モネはこうした
暗い絵を
嫌いました。そして、光に
溢れたみずみずしい
景色を
描くために、新しい
技法を
使いました。ある色を作るのに、
絵の具を
混ぜ合わせるのではなく、
純粋な色を数多くの点としてとなり合わせるように
描いたのです。こうすると、
離れて見た場合、それらの色が
混ざり合って見えます。しかし、
絵の具を
混ぜて
使ったときよりもはるかに明るい色になるのです。モネは、となり合う点どうしを
補色の
関係にするなど、いろいろな
工夫を
重ねました。こうして、モネの絵は、
自然の風や
太陽のあたたかさまで
感じさせるようなものになっていったのです。
10.
最初は
受け入れられなかったモネの絵も、
次第に多くの人に
認められるようになりました。今その光
溢れる絵は、
世界中の人々から
愛されています。
11.「モネさんのような絵を、
印象派の絵と言ってもイーンショウか。」
12.「うん、いいかモネ。」
13.
言葉の森
長文作成委員会(α)