1. 【1】アルフレッドのゆいごんじょうは、十二月十七日、サン=レモのやしきでひらかれました。立ちあったのは、リュドビグの長男イマニュエル、ロベルトの長男ヤルマル、それにソールマンと
弁護士です。
2.【2】「なんですって。わたしが、ノーベルさんのゆいごんをとりしきることになっているんですって……。」
3. ソールマンは、おどろきました。たしかに、ゆいごんじょうのおもて書きには、ソールマンの名があります。【3】ゆいごんじょうが、
弁護士によってよみあげられるにつれ、ソールマンはさらに大きなおどろきにうたれ、まばたきもしません。
4.「わたし、アルフレッド=ノーベルは、あとにのこすざいさんについて、つぎのようにゆいごんする……。」
5. 【4】アルフレッドは、ごくわずかなお金をおくる友人、しんるいの名をあげたあと、こう書いていました。
6.「のこりのすべての金の
利子を、毎年、そのまえの年に、
人類のために
役だつしごとをした人々に、
賞としてわけること。
7. 【5】
利子は五つにわけ、
8.一、
物理学
9.一、
化学
10.一、
医学生理学
11.一、文学
12.一、
国際平和
13.の、それぞれの分野で、
重要な
発明発見をし、あるいは
理想にみちた
作品をあらわし、あるいはまた
戦争をふせぐことにつとめた
人物にあたえること。」
14. 【6】ゆいごんじょうを、
弁護士がよみおわると、ソールマンが、ぼうぜんとして、いいました。
15.「このしごとを、わたしがやるのですか。たった二十六さいのこのわたしが……。」
16.【7】「ソールマンさん……。ロシア語では、ゆいごんをとりしきる人のことを『たましいの
代理人』というのですよ。しっかりなさい。おじのアルフレッドは、あなたがこれをやれるとみこんだから、あ∵なたをえらんだのですよ。」
17. 【8】イマニュエルが、なき父リュドビグそっくりの、かしこそうな目をむけてはげましました。
18. そうはげますイマニュエルは、ヤルマルとともに、ゆいごんじょうがもしなかったら、アルフレッドのばく大なざいさんをもらえるはずの人なのです。
19.【9】「わかりました。では、このしごとを、わたしのしょうがいのしごととして、おひきうけします。」
20. そうちかったソールマンは、十二月二十九日、ストックホルムの教会で、アルフレッドのそうしきがおわったあと、しごとにとりかかりました。【0】
21.
22.(「ノーベル」大野
進著より)