長文集  9月4週  ○海の塩の秘密  si-09-4
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/06/09 09:40:18
 海水は塩辛いもので、私たちはそれを当た
り前のことだと思っています。実際、そこに
含まれる塩分は大変な量です。海水をすべて
蒸発させ、残った塩分を陸地に敷きつめると
、百五十メートルもの厚い層ができると言わ
れています。この大量の塩は、一体どこから
来たのでしょうか。
 塩分のふるさとのひとつは川です。地球上
に存在する川の大半は淡水なので、これは意
外な感じがします。雨が降ると水が地中にし
み込んで、土の中にあるミネラル分を溶かし
ます。このミネラル分の中に塩分が含まれて
います。溶け出した塩分は、川によって海ま
で運ばれます。ただ、淡水の川に含まれる塩
分はごく少ないので、なめても塩辛いとは感
じません。
 塩分のもうひとつのふるさとは、海底火山
です。活動する海底火山の爆発や熱水(ねっ
すい)の噴出によって、地中からミネラル分
が放出され、その中に含まれる塩分が海水に
溶け込むのです。
 このように、塩はいろいろなところから海
を目指してやって来ますから、海には塩がた
まる一方のように思えます。その上、海から
はどんどん水分が蒸発しミネラル分だけがあ
とに残ります。これでは、塩分がどんどん濃
くなっていったとしても不思議ではありませ
ん。しかし現実には、海水の塩分濃度は、ほ
ぼ一定です。つまり、増える分と減る分とが
うまく釣り合っているのです。では、塩分は
一体どこへ行くのでしょう。
 まず、海の生物が塩を体の中に取り込みま
す。例えばサンゴやエビ、カニなどは、硬い
殻を作るために塩類を必要とします。これら
の生き物が死ぬと、その殻に含まれていた塩
類は海底にたまりま す。こうして塩分の一
部は取り除かれます。このようにして、海水
中の塩分は、増える量と減る量のバランスが
とれているのです。
 では、この海底にたまった塩分はどうなる
のでしょうか。海底を∵含む地殻は巨大なプ
レートで成り立っています。それらのプレー
トは少しずつ移動し、二つ以上のプレートが
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出合うところでは、一方が隣のプレートの下
に入り込みます。沈み込んだ海底は高温のマ
ントルの中で溶けていきます。当然、海底に
たまっていた塩分も一緒に溶けてしまいます

 地中から海へ、そしてまた地中へ。塩は、
この壮大な旅を気の遠くなるような年月の間
繰り返してきました。今日の一杯のお味噌汁
にも、塩分の長い旅の歴史が刻まれているの
です。

「塩分さん、最初の生まれはどこなんですか
。」
「実は、スーパーの食品売り場なんだよ。」
「うそでシオ。」

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(
Μ)