【1】「おかえりなさあい。」 水曜日の朝のあいさつは、おはようではあり ません。私のお母さんは看護師です。夜勤と 言って夕方から夜の間、病院で働くことがあ るのです。【2】入院している患者さんは、 寝ている間も具合が悪くなったり、どこか痛 くなったりするので、一晩中、ナースステイ ションには看護師さんが起きています。ベッ ドのそばのブザーを押すと、飛んできてくれ るのです。だから、安心して入院できるので す。 【3】お母さんの夜勤の晩は、お父さんと 二人です。夕ご飯も、お父さんが作ってくれ ます。お父さんの作るご飯は、お母さんのと きと少し違います。味が少し塩辛くて、野菜 やお肉の切り方が大きいです。【4】お母さ んのときは、おかずの種類もたくさんありま すが、お父さんのときは、あまりありません 。お父さんの作るメニューの中で、いちばん おいしいのはカレーライスです。 お母さんは、お父さんと結婚する前からず っと看護師です。【5】子供のときからなり たかった職業だそうです。看護師になるため の学校は、勉強がとても大変で、普通の学校 のような勉強だけでなく、実際にやってみる 看護実習というのがあったそうです。でも、 お母さんは、看護師になる日を夢見て、いっ しょうけんめいがんばったと言っていました 。 【6】私が生まれるときだけお休みしまし たが、あとはずっと今も看護師です。お友だ ちに 「うちのお母さん、看護師なんだ。」 と話すと、みんなびっくりして 「いいなあ。」 とうらやましがります。女の子の中では、人 気のある職業だからです。【7】でも、実際 は夜勤もあるし、とても忙しい大変な仕事な のだということを知らないんだなあと私は心 の中で思います。∵ お母さんは、時々、 「ゆきちゃん、肩をもんでくれる?」 と言います。そんなときのお母さんの肩は、 |
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力こぶを入れたようにかたくなっています。 私は、ちょうどよい力でもみほぐしてあげま す。【8】すると、お母さんは、 「ああ、気持ちいい。最高。」 と喜びます。肩のほかに、首や足のふくらは ぎをやってあげることもあります。長い時間 やっていると、お母さんはうたた寝してしま うこともあります。 そんなに大変な仕事だというのに、お母さ んは今まで一度もやめたいと思ったことがな いそうです。【9】この間、私が 「どうして看護師をずっと続けたいと思うの ?」 と聞いてみたら、お母さんは、 「そうねえ。患者さんから、ありがとうって 言われたとき、人の役に立てたんだなあって 思えるからかな。」 と言ってにっこり笑いました。【0】 (言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会 φ) |