1. ダーウィンのお父さんとおじいさんは、
医者でした。ダーウィンも
最初は大学の
医学部に入れられて
勉強をしていました。しかし、ダーウィンは、
成績が
悪く、やる気が見られませんでした。見かねたお父さんは、ダーウィンを
医者にすることをあきらめて、
牧師になるための大学に入れなおしました。しかし、ダーウィンはここでも
牧師の
勉強には
関心がなく、
博物学という
動物や
植物の
勉強にばかり
夢中になっていました。
2. やっと大学を
卒業したダーウィンは、
今度は
海軍の
測量船に
乗って
世界中を見て回ることにしました。お父さんは、船で
世界一周することなどはもちろん大
反対です。しかし、
周りの人の
助けも
借りて何とかお父さんを
説得したダーウィンは、それから五年間、ビーグル
号に
乗って
世界中を
探検しました。
3. 南米のガラパゴス
諸島で、ダーウィンは
不思議なことに気づきました。ガラパゴス
諸島の
島と
島の間には
速い海流が
流れていて、
動物たちが行き来することができません。そのような
閉ざされた
島にすむ
動物たちは、
島ごとに
姿形が
変わっていたのです。
例えば、ヒワという鳥のくちばしが、ある
島では
昆虫を食べるのに
都合よくできているの
に対し、ほかの
島では
植物を食べるのに
都合よくできているというようなことです。
4. ダーウィンは、この
観察をもとに、
自然淘汰という考えを作り上げました。つまり、それぞれの
環境に
適したものが
生き残り、
適さないものが
淘汰されることによって、だんだんと
種が
進化していくという考え方です。
5. 当時の人々は、
生物の
種は
神様が作ったもので
最初から
完全な形であり、
進化することなどはありえないと考えていたので、ダーウィンは多くの人から
批判されました。
更に、ダーウィンが、
進化論を人間にあてはめて、「人間もサルから
進化した」と
述べると、∵
批判は
更に大きく広がりました。人間が
神様から作られたものだという考えと、サルから
進化したものだという考えでは、天と地ほどの
差があったからです。
6. しかし、ダーウィンの考え方は科学
的で、だれもが
納得せざるをえない
根拠を
持っていたので、
次第に多くの人が
認めるようになりました。
7. ところが、この
進化論にも弱点がありました。それは
第一に、
環境に
適したものが
生き残るという考え方で
説明するには、
生物の
種類があまりにも多いということです。もし、ライオンが
地球の
環境に
最も適していたとすれば、ほかの
動物は
全部ライオンとの
生存競争に
負けて、
地球上にはライオンしかいなくなってしまってもおかしくありません。
地球の
環境に
最も適しているものがラッコだったらもっと
大変です。右を
向いてもラッコ、左を
向いてもラッコで、どこを見てもラッコラッコラッコラッコラーッと、いつの間にか
怒られているようです。
8.
進化論の
第二の弱点は、
自然淘汰だけで
進化を
説明しようとすると、鳥のくちばしの
変化ぐらいまでは
説明できても、アメーバが魚になり、魚が
爬虫類になり、
爬虫類が
哺乳類になるというような大きな
変化は
説明しにくいということです。
9.
進化論の
第三の弱点は、
進化論そのものよりも、その
進化論を
利用した社会の
問題でした。
進化論は、
欧米諸国がアジアやアフリカを
植民地にするときに、その
裏づけとなる考えとして
利用されました。つまり、白人は
最も優れていて、
有色人種はそれよりも
劣り、その
有色人種よりも
更に劣っているのがサルだという考え方が、白人の
支配を正当
化したのです。
10. このような弱点はあったものの、ほぼ一人で
進化の
全体像を考え出したダーウィンは、人間のものの見方を大きく
前進させたのでした。
言葉の森
長文作成委員会(Σ)