1. 【1】ぼくは、二年生のとき、
初めて一人で電車に
乗りました。夏休みにおばあちゃんのうちへ行くためです。
駅のホームで、お母さんは、
心配そうに何回もぼくの顔を見て、
2.「いい?
港南台でおりるんだからね。二つめだからね。」
3.と言いました。【2】ぼくは、うなずきました。でも、お母さんは、まだ
心配そうで、
4.「
港南台、だからね。おばあちゃんがそこでまってるからね。」
5.と言いました。
6. 青い電車が入ってきて、いよいよ
乗り込みました。ぼくは、ドキドキしてきました。【3】お母さんを見たら、いっしょうけんめい手をふっています。ぼくは、それを見て、手をふるのはまだ早いよ、と思いました。そのとき、プルルルルーとベルが鳴って、びっくりしているうちに、電車のドアが
閉まりました。
7. 【4】ぼくは、ドアに顔をくっつけて、お母さんを見ました。お母さんが、何か言いながら手をふっています。ぼくもふろうとしたけれど、あっというまに電車は
発車して、お母さんは見えなくなってしまいました。
8. 【5】ぼくは、
急に心細くなって、あたりを見回しました。すると、近くの
席にぼくぐらいの
年齢の子がゲーム
機で
遊んでいるのが見えました。そのとなりには、もう少し大きいその子のお兄さんのような子もいて、やはりゲームをやっていました。【6】二人は、大きな声で
笑ったり、たたきあったりしながら、
夢中で
遊んでいます。ぼくは、何のゲームかなあと思いながら、ずっとそちらを見ていました。
9.「
次は
洋光台、
洋光台。」
10.とアナウンスが聞こえました。ぼくは、はっとしました。【7】いくつ
駅をすぎたか数えていませんでした。でも、「台」がつくから、合っているなと思いました。やっとついたと思って、電車をおりてホームをさがしても、おばあちゃんはいませんでした。∵
11. 【8】ぼくは、ドキドキしてきましたが、自分に、「
落ち着け。よく考えろ」と言い聞かせました。そこで手ににぎっていた紙を思い出して、よく見たら、「二つめ、
港南台」と書いてありました。ぼくは、どうしたらいいかわからなくなって、紙を
持ったまま立っていました。【9】そうしたら、知らないおばあさんが来て、紙をのぞきこんで
12.「一つ先まできちゃったね。
港南台でおりたかったんでしょ。あっちがわにきた電車にのって、一つもどればだいじょうぶ。」
13.と教えてくれました。
急いで
反対方向の電車に
乗ると、その電車はすぐに
発車しました。
14. 【0】電車が
次の
駅に近づくと、
15.「
次は
港南台、
港南台。」
16.と、アナウンスが聞こえました。
今度はしっかり紙を見ていたので、合っているなと思いました。電車が止まり、ホームにおりたら、おばあちゃんが遠くからぼくを見つけて、こっちに走って来るのが見えました。
17.(
言葉の森
長文作成委員会 φ)