長文集  11月2週  ○ミツバチの群れは  su-11-2
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/09/04 14:59:43
 ミツバチの群れは、一匹(ぴき)の女王蜂
と数千匹(びき)から数万匹(びき)の働き
蜂、繁殖期に現れる二千匹(びき)から三千
匹(びき)の雄蜂(おすばち)で構成されて
います。それぞれの役割分担も明確で、高度
な巨大社会を形成していると言ってもよいで
しょう。 
 ミツバチは、規則正しい六角形を組み合わ
せて巣板(すばん)を作ります。巣板を構成
する六角形の小部屋(こべや)は巣房(すぼ
う)と呼ばれます。巣房は、育児、花粉の貯
蔵、花蜜の貯蔵、ハチミツの加工など、さま
ざまな目的に利用されています。それぞれの
作業を効率よく行えるように、巣房の配置も
考慮されています。 
 では、ミツバチは、なぜ六角形の巣を作る
のでしょうか。もしミツバチの巣が丸だった
ら、上下左右に並べていくとき、無駄なスペ
ースができてしまいます。もし四角だったら
、巣と巣の間に隙間はなくなりますが、ミツ
バチが巣に入ったときに無駄なスペースがで
きてしまいます。ミツバチの体型から考える
と、六角形がいちばん効率がよいのです。 
 ミツバチの巣の材料は、働き蜂の腹部から
分泌される蝋片です。働き蜂は、その蝋片を
、後肢の内側にあるブラシ状の毛を使って抜
き取り、肢(あし)についた蝋片を大あごで
くわえ、それをかみ砕きながらはりつけてい
きます。この根気のいる作業を続けるだけで
も大変なことですが、定規も分度器もコンパ
スも持たずに六角形の巣を規則正しく並べて
いくのですから、まさに神業としか言いよう
がありません。 
 以前は、ミツバチが最初に丸い形の巣を作
り、それが周囲から押しつぶされて自然に六
角形になると考えられていました。しかし実
際にミツバチの巣づくりの様子を観察したと
ころ、初めから六角形を作っていることが分
かったのです。 
 一九六六年、ドイツの二人の学者は、ミツ
バチの巣が横向きに作られていることから、
六角形の巣を作る秘密は、重力に関係ある∵
のではないかと考えました。巣を作るとき、
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ミツバチは、頭を上下左右に向けたいろいろ
な姿勢を取らなければなりません。そのとき
に体にかかる重力は絶えず変化します。そこ
で、二人が注目したのが、働き蜂の首と腹に
ある感覚毛です。二人は、実験から、ミツバ
チは首の感覚毛が頭に触れることによって重
力の方向を感知していることをつきとめまし
た。ミツバチは、感覚毛の接触によって、自
分の体の向きを知り、六角形の巣を作ってい
たのです。
 ミツバチの巣がいかに巧妙に作られている
かは、数学者たちの研究によっても証明され
ています。三つの菱形からなる中央部のそれ
ぞれの角度は一〇九度二八分ですが、この数
字は、使う蝋の量を最小にして巣を作った場
合の角度なのです。数学者たちが微分学の理
論を使ったむずかしい計算をして出した数字
をミツバチは生まれながらに知っていたこと
になります。 
 ハニカム構造と呼ばれる六角形の組み合わ
せは、効率がよいだけではなく、安定した形
でもあります。外部から力が加えられたと 
き、うまく力を分散することができるのです
。ダイヤモンドや雪の結晶は、このハニカム
構造になっています。また、建築材料、航空
機の翼の内部、サッカーゴールのネット、ス
キー板(いた)の内部などにもこのハニカム
構造が応用されています。ハニカム構造がこ
んなにも幅広く採用されていることをミツバ
チが知ったら、はにかんでしまうかもしれま
せん。

 言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会(
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