1. ミツバチの
群れは、一
匹の
女王蜂と数千
匹から数万
匹の
働き蜂、
繁殖期に
現れる二千
匹から三千
匹の
雄蜂で
構成されています。それぞれの
役割分担も
明確で、
高度な
巨大社会を
形成していると言ってもよいでしょう。
2. ミツバチは、
規則正しい六角形を組み合わせて
巣板を作ります。
巣板を
構成する六角形の
小部屋は
巣房と
呼ばれます。
巣房は、
育児、
花粉の
貯蔵、花
蜜の
貯蔵、ハチミツの
加工など、さまざまな
目的に
利用されています。それぞれの
作業を
効率よく行えるように、
巣房の
配置も
考慮されています。
3. では、ミツバチは、なぜ六角形の
巣を作るのでしょうか。もしミツバチの
巣が丸だったら、上下左右に
並べていくとき、
無駄なスペースができてしまいます。もし四角だったら、
巣と
巣の間に
隙間はなくなりますが、ミツバチが
巣に入ったときに
無駄なスペースができてしまいます。ミツバチの
体型から考えると、六角形がいちばん
効率がよいのです。
4. ミツバチの
巣の
材料は、
働き蜂の
腹部から
分泌される
蝋片です。
働き蜂は、その
蝋片を、
後肢の
内側にあるブラシ
状の毛を
使って
抜き取り、
肢についた
蝋片を大あごでくわえ、それをかみ
砕きながらはりつけていきます。この
根気のいる
作業を
続けるだけでも
大変なことですが、
定規も
分度器もコンパスも
持たずに六角形の
巣を
規則正しく並べていくのですから、まさに
神業としか言いようがありません。
5.
以前は、ミツバチが
最初に丸い形の
巣を作り、それが
周囲から
押しつぶされて
自然に六角形になると考えられていました。しかし
実際にミツバチの
巣づくりの
様子を
観察したところ、
初めから六角形を作っていることが分かったのです。
6. 一九六六年、ドイツの二人の
学者は、ミツバチの
巣が
横向きに作られていることから、六角形の
巣を作る
秘密は、
重力に
関係ある∵のではないかと考えました。
巣を作るとき、ミツバチは、頭を上下左右に
向けたいろいろな
姿勢を
取らなければなりません。そのときに体にかかる
重力は
絶えず変化します。そこで、二人が
注目したのが、
働き蜂の首と
腹にある
感覚毛です。二人は、
実験から、ミツバチは首の
感覚毛が頭に
触れることによって
重力の
方向を
感知していることをつきとめました。ミツバチは、
感覚毛の
接触によって、自分の体の
向きを知り、六角形の
巣を作っていたのです。
7. ミツバチの
巣がいかに
巧妙に作られているかは、数学
者たちの
研究によっても
証明されています。三つの
菱形からなる
中央部のそれぞれの
角度は一〇九
度二八分ですが、この数字は、
使う蝋の
量を
最小にして
巣を作った場合の
角度なのです。数学
者たちが
微分学の
理論を
使ったむずかしい計算をして出した数字をミツバチは生まれながらに知っていたことになります。
8. ハニカム
構造と
呼ばれる六角形の組み合わせは、
効率がよいだけではなく、
安定した形でもあります。
外部から力が
加えられたとき、うまく力を
分散することができるのです。ダイヤモンドや雪の
結晶は、このハニカム
構造になっています。また、
建築材料、
航空機の
翼の
内部、サッカーゴールのネット、スキー
板の
内部などにもこのハニカム
構造が
応用されています。ハニカム
構造がこんなにも
幅広く採用されていることをミツバチが知ったら、はにかんでしまうかもしれません。
9.
言葉の森
長文作成委員会(Λ)