長文集  12月1週  うすいピンクの桜貝  su-12-1
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2014/09/04 15:09:58
 【1】私が小さい頃から大切にしているも
のは貝殻です。大切にしているだけではなく
て、今も集めているので、大切にしているも
のはどんどん増えていきます。 
 最初に貝殻をもらったのは、たぶん幼稚園
の年中のときです。【2】伊豆にあるお父さ
んの会社の保養所(ほようじょ)でお泊まり
をしたときです。きれいな伊豆の海には広い
砂浜があって、私は、そこでよく砂の山を作
って遊びました。砂の山を固めたあと、真ん
中を掘ってトンネルにするのが大好きでした

 【3】私は、浮輪をしても波が怖かったの
で、あまり海には入らないで砂遊びばかりし
ていました。砂を掘っていたら、小さい貝や
貝のかけらがたくさんみつかりました。私は
それを洗ったアイスのカップに集めました。
 【4】そのときも私が砂を掘っていたら、
赤い水着を着たお姉さんがやって来て、 
「たくさん集めたね。これきれいでしょう。
桜貝というのよ。」 
と、ピンクの二枚貝をくれました。すけて見
えそうなうすい貝で、まるで貝のお姫様のよ
うでした。【5】私はうれしくて、ありがと
うと言いたかったけれどはずかしくて言えま
せんでした。代わりに横にいたお父さんがお
礼を言いました。 
 夕ごはんのとき、お母さんにそのことを話
しながら桜貝を見せました。【6】お母さん
は、 
「あら、ほんと。こんなにきれいな桜貝って
あんまりないのよね え。よかったわね。」
 
と言って、そっと桜貝を手に乗せました。そ
して、 
「これねえ、うすくてわれやすいから、何か
でつつんでおいた方がいいね。」 
と、ティッシュを出して、そっとつつんでく
れました。∵
 【7】私は、ちょっと緊張しながら、何度
もそのティッシュをあけて、桜貝を見ました
。寝るまでに三十回ぐらいは見たと思いま 
す。ほんとうにきれいで、何回見てもあきま
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せんでした。その夜 は、うれしくてなかな
か眠れませんでした。
 【8】大事に持って帰った桜貝ですが、い
つだったかティッシュから出して、他(ほか
)の貝といっしょにテーブルに並べて遊んで
いるとき、つまみあげた指先にちょっと力が
入りすぎて、片方のはしが欠けてしまいまし
た。 
 【9】その後、自分で海で拾ったり、誰か
におみやげでもらったり、鎌倉のお店で買っ
たりして、貝殻はどんどん増えていきまし 
た。でも、やっぱりいちばん大切にしている
のは、はしが少し欠けたあの桜貝です。私は
、今も時々、桜貝の入った宝石箱を開けて見
ています。【0】

(言葉の森長文(ちょうぶん)作成委員会 
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