1. 『
種の
起源』の
著者チャールズ・ダーウィンがミミズの
研究を
始めたのは、二十八
歳のときでした。それ
以来、ダーウィンは四十年
以上もミミズの
観察を
続けました。ダーウィンが
最初に目をつけたのは
牧草地です。
最初はでこぼこで石ころだらけだったはずの
牧草地の土が細かくしっとりとした土になり、
地面が
平らになっていくのは、ミミズが土を食べて、土のフンをするからではないかと考えたのです。つまり、ミミズが長い年月をかけて、土を
耕しているのではないかと思いついたのです。
2. ダーウィンは、十年ほど前に土をよくするために
石灰をまいたという
牧草地に行ってみました。すると、
石灰は、
地表から七・五センチぐらいのところに
埋まっていました。ダーウィンはミミズが
石灰の上にフンをして、十年の間にこれだけ
埋めてしまったに
違いないと考えました。しかし、もしかしたら、その十年の間に、
誰かが土をまいたのかもしれません。ほかの
動物や風が土を
運んできたということも考えられます。そこで、ダーウィンは、これがミミズの
仕事だったということを自分の目で
確かめようと
決意しました。
3. ある年の冬、三十三
歳のダーウィンは、
自宅の
裏に広がる
牧草地に
石灰岩の
破片をばらまきました。この
場所なら毎日
観察することができます。しかし、
石灰岩の
破片が
埋まって見えなくなるまでに数年、ミミズが
耕す土の
量をほぼ
正確に計算できるようになるまでに数十年かかります。ダーウィンは、来る日も来る日も
牧草地をながめながら、この気の遠くなるような年月を
待ち続けました。
4. もちろん、この間、ダーウィンはただ
待っていただけではありません。ミミズにガラスやれんがのかけらを食べさせたらどうなるか、
地面の下に何
匹くらいミミズがいるか、ミミズのフンはどのように
移動するのかなど、ミミズ
に関するさまざまな
実験を行いました。まさにミミズづけの数十年間だったのです。ミミズのフンの
研究ばかりしているダーウィンに、もう青年になっていた
子供た∵ちは
憤慨しました。それでも、ダーウィンは
実験を
続けました。
5.
最初に
石灰岩の
破片をまいてから二十九年たち、ダーウィンは六十二
歳になっていました。その年の十一月、ついに
牧草地を
掘る日がやってきました。ダーウィンは、
牧草地にざくっとスコップをさしこみます。土を
持ち上げると、白いものが見えます。それは、言うまでもなく、二十九年前に
牧草地にばらまいた
石灰でした。
深さ五十センチほどの
穴を
掘ると、
周囲の土の
壁に
一筋石灰の
層が見えます。
石灰は、
地表から十七・五センチぐらいのところに
埋まっていました。二十九年間で十七・五センチということは、毎年
約六ミリずつ
埋められていたことになります。これは、もちろんミミズのはたらきによるものです。
6. ダーウィンは、この
研究を三百ページをこえる一
冊の本にまとめ上げました。
進化論の
提唱者として
有名なダーウィンですが、その一方でミミズのような小さな
生き物の
研究にも
生涯をささげたのです。みんなが
見向きもしないような小さな
生き物に
注目し、その
生態を明らかにしたダーウィン。そのダーウィンが
亡くなったのは、ミミズの本を書き上げてから半年後のことでした。
7.
言葉の森
長文作成委員会(Λ)