長文集  12月3週  ★その日から(感)  su-12-3
    毎日1ページ音読しましょう。漢字はふりがなをつけずに読めるようにしておきましょう。  2019/12/19 18:20:49
 【1】その日から、アインシュタインの、
核廃絶と戦争反対への努力がはじまりました

「われわれは、戦争には勝ちました。けれど
も平和を勝ちとったわけではない。」
 【2】博士はまず、アメリカ国民に対して
、こう忠告します。
 原子力は、人間の手にあまるほど危険な力
です。つぎの戦争で使われたら、世界は破滅
するでしょう。【3】だから、ぜったいに戦
争が起こらないように努力しなければなりま
せん。アメリカ人は、世界に先がけて原子兵
器のひみつをにぎった国民として、このこと
をぜひ自覚してほしいとうったえたのです。
 【4】博士は、終戦直後にできた、国際連
合の原子力委員会の会長を引き受けました。
一九四六年には国際連合に、世界政府をつく
ることを提唱します。つまり、世界から国境
をなくし、国家どうしの争いを永久になくそ
うというのです。
 【5】けれども、そのときすでに、ソ連を
はじめ世界各国で、アメリカに負けじと、核
開発競争がはじまっていました。
 こうなると、アメリカもだまってはいられ
ません。一九四八年、トルーマン大統領によ
って、こんどは「水爆(水素爆弾)」の開発
が命令されました。
 【6】核開発合戦はいよいよ過熱し、世界
はアメリカ側とソ連側にわかれて、にらみあ
うようになりました。
 人間のおろかさに、博士は深く胸をいため
ました。そして、あるときたずねてきた日本
人の記者に、「敗戦国日本の国民には、心か
ら同情します。【7】けれども、勝った国々
もいま、それ以上に苦しい道を歩んでいるの
です。」と、しみじみ語りました。博士は、
原子力発電所をはじめとする、原子エネルギ
ーの平和利用についても、かなり慎重な考え
をもっていました。
 【8】一九四五年『アトランティック=マ
ンスリー』という雑誌に∵は、つぎのように
書いています。「……原子力が将来、人類に
大きな恵みをもたらすとは、いまのわたしに
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は、考えにくいので す。原子力は脅威です
。」
 【9】人間は、原子力を発見できたのに、
どうして、それを管理できないのでしょう、
ときかれると、「それは、政治が物理学より
むずかしいからですよ。」と、皮肉をこめて
、答えています。【0】
 
(「アインシュタイン」岡田好恵著より)