1. 【1】その日から、アインシュタインの、
核廃絶と
戦争反対への
努力がはじまりました。
2.「われわれは、
戦争には
勝ちました。けれども
平和を
勝ちとったわけではない。」
3. 【2】
博士はまず、アメリカ
国民に対して、こう
忠告します。
4. 原子力は、人間の手にあまるほど
危険な力です。つぎの
戦争で
使われたら、
世界は
破滅するでしょう。【3】だから、ぜったいに
戦争が
起こらないように
努力しなければなりません。アメリカ人は、
世界に先がけて原子
兵器のひみつをにぎった
国民として、このことをぜひ
自覚してほしいとうったえたのです。
5. 【4】
博士は、
終戦直後にできた、
国際連合の原子力
委員会の会長を
引き受けました。一九四六年には
国際連合に、
世界政府をつくることを
提唱します。つまり、
世界から
国境をなくし、国家どうしの
争いを
永久になくそうというのです。
6. 【5】けれども、そのときすでに、
ソ連をはじめ
世界各国で、アメリカに
負けじと、
核開発競争がはじまっていました。
7. こうなると、アメリカもだまってはいられません。一九四八年、トルーマン
大統領によって、こんどは「
水爆(
水素爆弾)」の
開発が
命令されました。
8. 【6】
核開発合戦はいよいよ
過熱し、
世界はアメリカ
側と
ソ連側にわかれて、にらみあうようになりました。
9. 人間のおろかさに、
博士は
深く胸をいためました。そして、あるときたずねてきた日本人の
記者に、「
敗戦国日本の
国民には、心から
同情します。【7】けれども、
勝った国々もいま、それ
以上に
苦しい道を歩んでいるのです。」と、しみじみ語りました。
博士は、原子力
発電所をはじめとする、原子エネルギーの
平和利用についても、かなり
慎重な考えをもっていました。
10. 【8】一九四五年『アトランティック=マンスリー』という
雑誌に∵は、つぎのように書いています。「……原子力が
将来、
人類に大きな
恵みをもたらすとは、いまのわたしには、考えにくいのです。原子力は
脅威です。」
11. 【9】人間は、原子力を
発見できたのに、どうして、それを
管理できないのでしょう、ときかれると、「それは、
政治が
物理学よりむずかしいからですよ。」と、
皮肉をこめて、答えています。【0】
12.
13.(「アインシュタイン」
岡田好恵著より)