1. 【1】エジソンが七さいになったとき、一家は、ミランからヒューロン
湖のそばのポートヒューロンにうつりました。おとうさんのやっていた
食料品や
製材の
事業が大きくなるにつれて、あたらしく
鉄道の
駅ができたポートヒューロンのほうが、べんりだったのです。
2. 【2】エジソンは、この活気にあふれた町の小学校に入学しました。ところが、たちまちのうちに、教室のやっかい
者になってしまったのです。きまぐれで、ごうじょうで、すきなことにはむちゅうになるくせに、きらいなことには見むきもしないのです。
3. 【3】そのうえ、れいの
好奇心から、時と
場所もかまわずだしぬけに、ちょいちょい、先生がかんがえてもいないような
質問をしたりします。
4. ことに、数学の時間はたいへんです。先生が、
5.「二たす二は四。」
6.とおしえます。【4】すると、エジソンが、きゅうに立ちあがって、
7.「先生、どうして二と二をたすと四になるのですか?」
8.「かぞえてごらん。四になるじゃないか。」
9.「でも、なぜ四にならなければいけないのですか?」
10.「わからない子だな。二たす二は、四なんだ。よくおぼえておおき!」
11. 【5】そんなわけで、エジソンは先生からすっかりきらわれてしまいました。そして、先生はとうとう、きみは
低能児であると、きめてしまいました。
12. こんなことがかさなって、ある日、エジソンは、おかあさんにいいました。
13.【6】「……ぼく……もう学校へいかないよ。」
14.「まあ、きゅうに、どうしたの?」
15.「先生がね、ぼくのことを、ばかだっていうんだもの。そうして……。」
16.「そうして?」
17.「なにをきいても、よけいなことをきくんじゃないって、しかるんだもの。」
18. 【7】おかあさんは、じっとかんがえこんでいました。じぶんも、むかし、学校の先生をしたことがあり、そういう
教育法がとくべつの
才能をもった子どもをみちびくのに、てきとうでないことをよく知っていました。∵
19.【8】「そう……。それではこれからは、おかあさんが先生になってあげましょう。そのかわり、いっしょうけんめい
勉強するんですよ。」
20.「うん、ぼく、いっしょうけんめいやるよ。ぼく、ばかじゃないもの、ね。」
21. こうして、学校をやめたエジソンは、
家庭でとくべつの
教育をうけました。【9】それはじつにおもいきった
教育で、まだ八つか九つだというのに、母親のナンシーが先生になって、ギボンの「
ローマ帝国衰亡史」、ヒュームの「
英国史」、シアースの「
世界史」、バートンの「ゆううつの
解剖」、「科学の
辞典」といった、むずかしい本を読んだのです。
22. 【0】十二さいになると、ニュートンの「プリンキピア」という本の
勉強をはじめました。その中にでてくる数学は、先生のおかあさんでさえ、てこずるものでしたから、数学がにがてのエジソンには、どうにもくるしいたたかいでした。
23.(「エジソン」
崎川範行著 講談社 火の鳥
伝記文庫より)